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| 鍋というと“土鍋”ですが、今年の5月に私オリジナルの土鍋「奥土鍋」が完成したんです。土鍋というと普通は鍋料理をするためのものと考えられていますけど、私は土鍋をひとつの調理器具だと思っていて、1年中使ってきました。煮物も蒸し物もご飯も全部土鍋でやって、普通の鍋よりも美味しくできるから、「土鍋ってすごいな」ってずっと思ってて。土鍋の利点は、保温調理ができることなんです。保温調理というのは、沸騰させて火を止めて、余熱で火を通していくというやり方。物に火を通すにはぐつぐつ煮ないとダメだと思うかもしれませんが、肉や魚のタンパク質は60度くらいから固まりはじめるし、野菜も80度くらいでOK。私もいろいろ実験したけど、むしろニンジンなんて煮れば煮るほど皮から臭みが出る。「ニンジンが臭くて嫌い」っていう子がいるけど、それは煮すぎてるからなんです。保温調理で調理したニンジンは、皮ごと調理しても臭みなんて出ないんですよ。つまり、保温調理することによって野菜本来のうま味が引き出されるんです。もうひとつ、物に味が染み込むのはぐつぐつ煮てるときじゃなくて、実は冷めていくとき。でも急激に冷ましたのでは味は染み込みません。徐々にゆるやかに温度が下がるときに味が染み込んでいくので、そのゆるやかに冷めるという点でも土鍋は理想的なんです。 | ![]() |
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私、とにかく子供の頃から料理が好きで好きでたまらなかったんです。私の母は料理が嫌いで小さいときから私が台所を一手に引き受けていたので、まあ傍目から見ればやらされてるんですけど、私としてはうれしくてしょうがなかったんですよ。とにかく好きだから、手間をかけることは全然苦痛じゃない。何層にもなったケーキを作るのに、ムース作ってスポンジ焼いてなんたらかんたら…っていうのも楽しくてしょうがないんです。だからどんどんエスカレートしていくんですね。 そんなときに子供が生まれて。もう私、うれしくてうれしくて! 生まれたときから私の料理で育てられるなんてすごいことだし、これで私の料理が花開く!とさえ思いました。ところがね、子供が食べないんですよ……。気持ちも時間も労力も、かければかけるほど子供が引いてしまう。こう言っちゃなんだけど全然手をかけてないお母さんはいくらでもいて、手をかけてない料理を他の子は美味しそうに食べてるのに、これだけ手をかけた私の料理をウチの子がゲーとかするのはあまりにも理不尽じゃないのって、ものすごく悩んだ時期があったんです。そんなときあるお母さんの家に遊びに行ったら、手をかけてない料理を子どもたちがもう、一目散に食べてるのを見て、「あ、料理の原点ってこういうことかもしれん」って目から鱗が落ちたんです。私の料理は相手のことを思ったものではなく、料理している自分がとても好きだったり満足だったり、自分だけの世界で完結してたんじゃないだろうか。子供の気持ちなんか全然考えてなかったんじゃないだろうかって。じゃ子供が喜ぶことは何かというと、手をかけた料理ではなくて、お母さんが一緒にニコニコしてあげること。明るい雰囲気で食べられることが一番のごちそうなんですよね。手をかけなくてもその分、私や子供がニコニコできて美味しい料理が本物だという風に意識が変わったんです。 そういう意味で、鍋は理想のズボラ料理と言えるかも。やっぱり母親って、一人分ずつ盛ったものとか大皿料理だと、「肉ばっかり食べんで野菜食べなさい!」とか、ついつい気になるんですよ。でも鍋だと、何食べてようがどれだけ食べてようが全然気にならない。だから親が子供に対してとてもおおらかになれる食事だと思いますね。それでいて野菜がたくさんとれてバランスもいいし。お母さんは作るのが簡単だからニコニコ、子供たちは小言を言われずニコニコ…鍋は家族みんながニコニコできる料理じゃないでしょうか。 |
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