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インタビュー:奥薗壽子さん
底冷えする冬の到来と共にふと食べたくなるのが「お鍋」。家族みんなでひとつの鍋をつつきあう鍋料理には、体だけでなく心もほっこりさせてくれる効果があります。また手間がかからず簡単に作れるのも大きな魅力のひとつ。そこで、“ナマクラ流ズボラ派”家庭料理研究家の奥薗壽子さんに「お鍋」の魅力、そしてオリジナルのおすすめ鍋3品を教えていただきました。ぜひお試しあれ!
GUEST PROFILE - 奥薗壽子(おくぞのとしこ)
1962年京都生まれ。“ナマクラ流ズボラ派”家庭料理研究家。「料理は楽しくシンプルに」をモットーに、手間、時間、素材の独自の節約術を考案。明るいキャラクターで、雑誌、講演、テレビ、料理教室など幅広く活躍を続ける。一男一女の母。「奥薗流 ごはんの基本!」(世界文化社)など著書多数。
なべかまぺえじ
家族全員が揃うとき、「じゃぁ鍋しようか」
鍋って基本的には冬場のものですけど、韓国ブーム以来、キムチ鍋などピリ辛のものをはじめとして、わりと1年中食べるようになったんじゃないでしょうか。
我が家でも鍋は結構します。子供が大きくなると、家族全員が同じ時間に揃うことが難しくなりますよね。だから今夜は珍しく全員揃うというようなときに、「じゃあ鍋しようか」ってことになったり。やっぱり、“みんなでひとつのものを”っていうのが鍋の魅力のひとつだと思いますから。ウチウチの場合、最初から味のついている鍋よりも、しゃぶしゃぶのようにつけだれや薬味で味の変化をつけられる鍋をすることの方が多いですね。味がついていると結構飽きてきたりもしますから。個人的に好んで鍋によく入れる具材は、ささがきゴボウ。一般的かどうかはよくわかりませんけど、鍋によく合うし美味しいですよ。
鍋にまつわる思い出といえば、昔“野外料理をする会”というのに参加していたことがあるんです。私が料理長になってみんなでいろんな鍋を作りました。なかでも印象に残っているのが「だご汁」。九州独特の料理なんですけど、うどんの生地を粘土みたいにびゅーっと伸ばして、それを包丁で切らずに手でちぎってだんごみたいにした“だご”を、鶏のぶつ切りや野菜が入った煮汁の中にどんどん入れていくんです。子供たちに手伝ってもらってだごをいっぱい作って。外で寒い寒いって言いながらみんなで食べたのが美味しかったし、楽しかったですね。
優秀な調理器具“土鍋”を見直そう
鍋というと“土鍋”ですが、今年の5月に私オリジナルの土鍋「奥土鍋」が完成したんです。土鍋というと普通は鍋料理をするためのものと考えられていますけど、私は土鍋をひとつの調理器具だと思っていて、1年中使ってきました。煮物も蒸し物もご飯も全部土鍋でやって、普通の鍋よりも美味しくできるから、「土鍋ってすごいな」ってずっと思ってて。土鍋の利点は、保温調理ができることなんです。保温調理というのは、沸騰させて火を止めて、余熱で火を通していくというやり方。物に火を通すにはぐつぐつ煮ないとダメだと思うかもしれませんが、肉や魚のタンパク質は60度くらいから固まりはじめるし、野菜も80度くらいでOK。私もいろいろ実験したけど、むしろニンジンなんて煮れば煮るほど皮から臭みが出る。「ニンジンが臭くて嫌い」っていう子がいるけど、それは煮すぎてるからなんです。保温調理で調理したニンジンは、皮ごと調理しても臭みなんて出ないんですよ。つまり、保温調理することによって野菜本来のうま味が引き出されるんです。もうひとつ、物に味が染み込むのはぐつぐつ煮てるときじゃなくて、実は冷めていくとき。でも急激に冷ましたのでは味は染み込みません。徐々にゆるやかに温度が下がるときに味が染み込んでいくので、そのゆるやかに冷めるという点でも土鍋は理想的なんです。 奥薗壽子さん写真
いろんな鍋、道具を使ってきた結果、味を含ませる料理に理想的な調理器具として行き着いたのが土鍋。でも完璧な土鍋っていうのがなかったんですね。そこで今回、満足がいく土鍋を自分で作ることにしたんです。鍋料理にしか使わない土鍋というのは1年のうちおそらく3ヶ月くらいしか使われなくて、あとは倉庫にしまわれているはず。でもこれだけいいものなので、ぜひ1年中使ってほしいという願いを込めて作りました。鍋をするときは、ぜひ土鍋にも目を向けてみてくださいね。 奥薗壽子さん写真
奥薗さんプロデュースの「奥土鍋」。来年には一回り小ぶりのタイプも発売予定。
鍋はみんながニコニコできる理想のズボラ料理
奥薗壽子さん写真
私の“ズボラ”の原点についてちょっとお話しましょうか。
私、とにかく子供の頃から料理が好きで好きでたまらなかったんです。私の母は料理が嫌いで小さいときから私が台所を一手に引き受けていたので、まあ傍目から見ればやらされてるんですけど、私としてはうれしくてしょうがなかったんですよ。とにかく好きだから、手間をかけることは全然苦痛じゃない。何層にもなったケーキを作るのに、ムース作ってスポンジ焼いてなんたらかんたら…っていうのも楽しくてしょうがないんです。だからどんどんエスカレートしていくんですね。
そんなときに子供が生まれて。もう私、うれしくてうれしくて! 生まれたときから私の料理で育てられるなんてすごいことだし、これで私の料理が花開く!とさえ思いました。ところがね、子供が食べないんですよ……。気持ちも時間も労力も、かければかけるほど子供が引いてしまう。こう言っちゃなんだけど全然手をかけてないお母さんはいくらでもいて、手をかけてない料理を他の子は美味しそうに食べてるのに、これだけ手をかけた私の料理をウチの子がゲーとかするのはあまりにも理不尽じゃないのって、ものすごく悩んだ時期があったんです。そんなときあるお母さんの家に遊びに行ったら、手をかけてない料理を子どもたちがもう、一目散に食べてるのを見て、「あ、料理の原点ってこういうことかもしれん」って目から鱗が落ちたんです。私の料理は相手のことを思ったものではなく、料理している自分がとても好きだったり満足だったり、自分だけの世界で完結してたんじゃないだろうか。子供の気持ちなんか全然考えてなかったんじゃないだろうかって。じゃ子供が喜ぶことは何かというと、手をかけた料理ではなくて、お母さんが一緒にニコニコしてあげること。明るい雰囲気で食べられることが一番のごちそうなんですよね。手をかけなくてもその分、私や子供がニコニコできて美味しい料理が本物だという風に意識が変わったんです。
そういう意味で、鍋は理想のズボラ料理と言えるかも。やっぱり母親って、一人分ずつ盛ったものとか大皿料理だと、「肉ばっかり食べんで野菜食べなさい!」とか、ついつい気になるんですよ。でも鍋だと、何食べてようがどれだけ食べてようが全然気にならない。だから親が子供に対してとてもおおらかになれる食事だと思いますね。それでいて野菜がたくさんとれてバランスもいいし。お母さんは作るのが簡単だからニコニコ、子供たちは小言を言われずニコニコ…鍋は家族みんながニコニコできる料理じゃないでしょうか。
奥薗壽子さんオリジナルお鍋レシピ掲載:奥薗流 お手軽鍋でおもてなし!