







松下:Bluetoothレーザーマウス「VGP-BMS80」は、まったく新しい発想で開発された“ソファで使うためのマウス”です。
近年、テレビサイドPC「TP1」をはじめ、テレビに接続して使えるPCが増えてきました。それに伴い、HDMIケーブルを使ってPCとテレビを簡単に接続し、リビングでくつろぎながらウェブブラウジングをしたり、家族でDVDやブルーレイディスクで映画などのコンテンツを楽しむ、というスタイルが普及してきています。
こんなとき、わざわざキーボードを持ち出さなくても、リモコン感覚でPCを操作できる機器があれば便利だという考えから生まれました。
私たちが目指したのは“手元を見なくても直感的な操作が可能で、画面の中のコンテンツに集中できる、シンプルで操作が簡単な機器”でした。従来のリモコンのように、ボタンだらけで操作が難しいものにはしたくないという気持ちがありました。
そのためには、いかに不要なボタンを減らすことができるかがカギでした。ボタンの数や配置、それぞれにつけられる名称の取捨選択のため、着想から約4年の歳月をかけて開発されています。
ソファに座ってリラックスした状態で使うことができる製品ということで、デザインや形状など手で握った際の快適さはもちろん、ソフトウェアキーボードの使い心地にもこだわっています。

リモコン感覚で使える「エアモード」は、親指を使ってフリーカーソルで自由自在な操作が可能。

「マウスモード」では、通常のマウス機能に加えてウインドウのスクロール操作なども可能。

三澤:リモコンの操作というのは上下左右のカーソル移動が基本ですが、PCの画面ではフリーカーソルでの移動が基本です。最初に取り組んだのが、正反対ともいえる2つの操作をいかに違和感なくシームレスに融合するか、という点でした。特にフリーカーソルでの移動をどう実現するかが大きな課題でした。
PCの画面は、解像度にもよりますが基本的に広大な領域となります。そのため、広い領域をサッと移動できて、狙った地点にカーソルがくると細かい精密な動きができるという、2つの要件を満たすものでないと快適に使えません。
そこで採用したのが「OFS(Optical Finger Sensor)」という技術です。これは指でなぞるとフリーカーソル移動ができる光学センサーです。いくつもの試作品で試行錯誤を繰り返した結果、このOFSと十字キーを組み合わせるという形に落ち着きました。
次に取り組んだのが、デザイナーの沢井とともに、機器としてどのような形状が最適なのかを考え、試作品に落とし込む作業でした。この作業では、関係者を集めて紙粘土をこねながら、どんな形状がいいのかを試行錯誤しながら時間をかけて考えました。
紙粘土の中に乾電池を入れ、実際に製品化したときの大きさを意識しながら、ガンタイプや大福のような丸いタイプなどさまざまな形状を作り、それを触りながらディスカッションの上、試作品を作っていきました。

正反対ともいえる2つの移動を融合させるために作られた試作の一部。左は十字キーにタッチパッドを組み合わせたもの。

紙粘土をこねて作成したモックアップの一部。これがディスカッションのたたき台となり、試作品となった。

沢井:モックを作って触ってみると、実際にいろいろなことがわかります。たとえば、持ちやすさを優先するとガンタイプのような形状になるのですが、それをテーブルの上に置くと横になってしまうので、いわゆる製品としての“顔”がなくなってしまいます。製品としての“顔”を確保しながらも持ちやすさがスポイルされない形状を検討し、試作品づくりに落とし込んでいきました。
ところが、最初に試作品を作ったときに「思ったように動かない」という違和感を感じることがありました。見た目を考えて、十字ボタンとOFSの部分をドーム状にへこませた形状にしてみたのですが、これが逆効果だったのです。
さまざまな形状を試作してハードウェアのユーザーテストをしてみた結果、OFSの形状は縦方向に膨らみのある形状がベストであるということがわかりました。これを分析すると、人間の指は縦方向の動きには追従するけれど、横方向の動きはそれほど得意ではない、ということになります。
OFSは親指で操作しますが、縦方向に膨らみのある形状にすると、山に沿って指が上下にスムーズに動くのです。しかし、横方向に膨らみのある形状にすると、指が追従せずにOFSから離れてしまうのです。また、縦方向にだけ膨らんでいて、横方向には平らな形状にすることで、指先で縦と横の認識も同時にできるという利点もあります。
OFSは小さな部品ですが、人間の指の構造にあわせてボタンの形状を調整するだけで、ここまで使い心地に差が出るという点は大きな発見でした。

沢井が作成したモックアップの一部。さまざまな形状が検討され、試作品の形状の方向性が決められた。

試作品第1号。「思ったように動かない」という違和感から、OFSのさまざまな形状が徹底的に追及された。

青木:私は開発がかなり進んだ段階からデザインに参加し、製品に落とし込んでいきました。リモコンとマウスはそもそもの使い方が違うので、リモコンでもありマウスでもあるというのはデザインをする上で難しいポイントでした。デザインするにあたって、まずはどちらを優先するのかをヒアリングしました。
個人的に“マウスはリビングになじまない”という想いがあり、リモコン利用をメインとしてデザインをしようと考えていました。ディスカッションの結果「あくまでリビングで使うリモコンであり、そこにマウスの機能をつけたもの」と定義されました。
こうなると、マウスとしての使い心地に疑問を抱く方がいるかもしれませんが、実際にはマウスとして長時間使っても疲れない形状になっています。前と後をシンプルなカーブの形状にすることで手に当たらないように配慮し、左右のボタンもドーム形状のへこみに隣接させたことで指のかかりがよくなっています。
一番苦労したのはボタンのデザインでした。マウスやリモコンは手で握って使う道具なので、ボタンの配置やそれぞれの機能、ボタンが押されるタイミングなどが確定していないと、最適な形状や大きさを考えることができません。
たとえば、Enterキーは右、左、中央、どの位置に配置するかで大きさや形状が変わってきます。ボタンを最適なものにするためにモックアップをたくさん作り、ボタンの機能と名称を絞り込みながら、同時にベストな位置・形状・サイズを決めていきました。

ベストなボタンの配置、形状、サイズを決めるために、もっとも時間を費やして作業をしたというモックアップの一部。

最終的な製品写真。リビングに置いても違和感なく溶け込むスタイリッシュなデザインに仕上がった。

黒須:「VGP-BMS80」はVAIOとPS3で使えます。また、それぞれのシーンで「マウスモード」と「エアモード」を切り替えて使うこともできますが、これらの切り替えを賢く、直感的に行うための機能は工夫を重ねました。
VAIOとPS3にはBluetoothで接続しますが、「VGP-BMS80」は接続する機器(ホスト)の情報を2つ持つことが可能です。一般的なBluetooth対応機器はホストの情報をひとつしか持てないため、VAIOからPS3(あるいはその逆)へ接続を切り替えるたびに、コネクションをし直す必要があります。ホスト情報を2つ持つことで、VAIOとPS3の切り替えをスマートに実現しました。
また、専用のデバイスドライバを組み込むことなく、本体内部に、ポインタ速度と加速度をそれぞれ3段階で調整する機能を備えています。この機能により、これらを「VGP-BMS80」のためにPC側で改めて調整する必要が無くなり、普段使っているマウスやタッチパッドなどのポインティングデバイスの動作に影響を与えることなく、どちらも快適に使えるようになっています。
「エアモード」と「マウスモード」の切り替えにも工夫を凝らしています。切り替える方法としては、ボタンやセンサーを使った仕組みが考えられますが、今回は“人はどのようにしてマウスを使うか”という点に着目しました。大多数の方はマウスを左右に振ってカーソルが動いているのを確認しているようで、この素振りに似た行動を利用しようと考えました。
「エアモード」から「マウスモード」への切り替えは“マウスを横に振る”、逆に「マウスモード」から「エアモード」への切り替えは“OFSを指でなぞる”という、人間の自然な行動を利用して2つのモードを切り替える方法を決めたのです。

モードの切り替えは「スクロールボタンを押す」「左右のマウスボタンを同時に押す」というショートカットでも可能にした。

黒須が担当したOFSのサンプルの一部。材質や表面処理にもこだわり、時間をかけて指がスムーズに動かせるものを追求した。

高橋:私は八角と組んで付属のソフトウェアキーボードを開発しました。従来のソフトウェアキーボードというと、実際のキーボードを模したものや、文字を碁盤の目状に並べたマトリックス型のものでした。
しかし、これではソファでリラックスした状態で使うリモコン感覚のスタイルに合いません。もっと気持ちよく、リラックスした感覚で使えるソフトウェアキーボードは実現できないかと考えました。アイデアのスケッチからスタートして、さまざまな方法のソフトウェアキーボードを検討していく中で、縦方向の移動が気持ちよく動かせるという点に着目しました。
そこで生まれたのが、OFSを使って、親指で縦方向にスルスルとカーソルを動かして文字を選択するクロスバー方式のソフトウェアキーボードでした。クロスバー方式であれば、視線の移動が少ないので目が疲れないというメリットもあります。また、省スペースなのでブラウザやウインドウを見ながら入力ができるので快適です。
操作感についてはユーザーテストを行い、実際の指の動きを詳しく検証しています。このテストによって、たとえば遠くまで動かしたい場合、実際はズルズルと指を大きくストロークさせるのではなく、指を速く動かせばいいことがわかりました。そこで、ユーザーが指を速く動かした場合は、等速で移動するのではなく、ある程度デフォルメして加速した動きにしました。
また、ストレスを感じずに気持ちよく使っていただくために、細かいところにも工夫を凝らしています。たとえば、アルファベットの入力では携帯電話でお馴染みの方法でキーを3つずつグルーピングして並べてあります。これはすべての文字を縦に並べると長くなり、見にくくなってしまうのを防ぐための配慮です。よく使う言葉がサッと入力できるように、文字変換の学習機能もそなえています。

クロスバー方式を採用したソフトウェアキーボード。短いテキストならリモコンを片手に快適に入力できる。

ブラウザでテキスト入力をしている画面。省スペースなので、開いているブラウザやウインドウを見ることができる。

八角:気持ちよさの重視という点では、高橋と議論を重ねました。OFSをなぞる動きや十字キーを押す指の動きと、画面の動きにズレがあると気持ちがよく操作感を得ることができません。ゲームソフトを作り込むように随所でチューニングを行い、テストを繰り返しました。
たとえば、画面の動きはアニメーションで表示しているのですが、速く動かしたときはアニメーションを減らしてスピードを重視し、遅く動かしたときはそのまま出すなど、操作のスピードによってアニメーションを調整しています。
また、遠くまでサッと動かしたときのダイナミックな動きと、目的のポイントに近づいたときの緻密な動きを延々とシミュレーションして調整しました。こうすることで、どんな操作をしたときでも指にフィットする動きを実現しました。
ハードでも手になじむ形状の議論と作り込みを行ったように、ソフトでも指を快適に動かすための作り込みを行っています。

ユーザーインターフェース担当の高橋とプログラム担当の八角。2人で膝をすりあわせるように議論しチューニングを重ねた。

3つの文字でグルーピングされたアルファベット入力画面。ドットやスラッシュなどの記号も入力しやすい。

松下:今回語ったメンバー以外にも多くの人々に協力してもらい、じっくりと時間をかけて議論やシミュレーションをくり返してゼロから作りあげた意欲作になっています。
“家庭のリビングで、大画面テレビにつないでリラックスした状態でPCを楽しむ。”、そんな新しいライフスタイルを提案する製品が生まれたと自負しています。いままでにないユニークな製品ですが、1度使えばその便利さと快適さを実感してもらえると思います。
ぜひ、VAIOまたはPS3とテレビを接続して「VGP-BMS80」の使い心地をためしてほしいですね。
「VGP-BMS80」には、VAIOと接続してPCコントローラーやマウスとして使用することができる「PCモード」と、PS3と接続してコントロールすることができる「PS3モード」があります。それぞれのモードにおいて、用途に合わせて「エアモード」と「マウスモード」を切り替えて使用します。

「エアモード」では、リビングルームなどでくつろぎながらテレビに接続したVAIOの操作が可能。ソフトウェアキーボードを使えば、キーボードを手元に用意しなくても、ちょっとした文字入力が手軽に行えます。「マウスモード」にすれば、そのままBluetoothマウスとして使用することができます。
※専用ソフトウェアキーボードはVAIO専用となり「PCモード」でのみ動作します。同梱のCD-ROMをVAIOにインストールしていただくとご使用になれます。

「エアモード」では、フリーカーソルを使ったブラウジングや“XMB(クロスメディアバー)”など、PS3の操作をテレビから離れた距離からでも行うことが可能です。「マウスモード」に切り替えれば、PCモードと同じくBluetoothマウスとして使うこともできます。
※本機はPlayStation®3のゲームをコントロールする機能はありません。
※PlayStation®3でご使用される場合、最新のシステムソフトウェアに更新してください。











