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InsideVAIO 「VAIO Media Ver.2.5」:開発者に聞く
01 concept1
「外から」をサポートしたVAIO Media新バージョン
企画担当 岸本 豊明
去年の秋に発表した「VAIO Media Ver.2.0」は、ルームリンクとの連携などにより、「家の中」でコンテンツを自由に楽しめる世界を実現しました。次のステップとして、人それぞれのライフスタイルが異なるということを考えれば、「家の外」へ発展していくのは自然な流れです。ただ、制約の多いインターネットで、ホームネットワークと変わらない操作感を実現するには、さまざまな技術上の問題点がありました。
岸本 豊明
ホームネットワークから「外」へは自然な流れ
「『VAIO Media Ver.2.0』は家の中でのユビキタスを実現しましたが、そもそも人には、自由でありたい、自分本位の生活スタイルで、どこでも遊びたい・出かけたい・食べたいなどの欲求が本質的にあり、その中には、『どこでもコンテンツを楽しみたい』も含まれます。ネットワークというテクノロジーを使って、家の内外を問わないユビキタスを実現するのが、VAIO Mediaの企画趣旨です」と、「VAIO Media」の商品企画担当、岸本 豊明は語る。

昨年10月にインタビューした「Inside VAIO・『VAIO Media』『ルームリンク』開発者に聞く」のなかで、岸本はVAIO Mediaの将来像として、「外出先からのシームレスなアクセス」を挙げていた。当時の「VAIO Media Ver.2.0」は、あくまで「ホームネットワーク」のサーバー/クライアントソフトであったが、発表直後には、サーバーに保存したテレビ番組や音楽などを外出先から楽しめる「外からVAIO Media」プロジェクトが、密かに進行していたのである。

「VAIO Mediaの基本構想は、2年くらい前に遡りますが、その時の、まだ『もやもや』とした要素技術の段階から、『外』というのはキーワードの一つになっていました。若い世代が携帯電話にお金をかけたりと、ライフスタイルがモバイルにシフトしていると言えますし、僕ら自身のライフスタイルを顧みても、家にいる時間はほとんどなく、せっかくテレビ番組を録画しても見る時間がありません。ホームサーバー1台あれば、外出先や出張先、あるいは海外赴任先(※1)でもコンテンツを楽しめるようにすることがVAIO Media Ver.2.5の柱となりました」(岸本)

家の「中」から「外」へという流れが自然であっても、実現することはまた別の話だ。外部のネットワークといえば、ブロードバンド・インターネットの利用が大前提となるが、それでもホームネットワークの通信速度が有線(100BASE-TX)で最大100Mbps、無線(IEEE802.11a)でも最大54Mbpsなのに対し、ADSLの上り方向速度は最大1Mbps(※2)程度とはるかに遅い。




イラスト
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また、大多数の個人ユーザーは固定IPアドレスを持っていないはずであり、どうやってホームサーバーにアクセスするのかなど、課題は山積していた。これらに加え、岸本にはもう一つこだわりがあった。

「ホームネットワークとインターネットでは速度や安全性が大きく違いますから、技術的にもかなり高度な処理を行っています。重要なことは、『中』と『外』の違いをお客様が意識することなく、さりげなく使えるということです。クルマを例に挙げれば、趣味でスポーツカーを乗り回す人はエンジンの排気量とか回転数とかを気にしますが、一般の方はまず気にしません。それでも普通に運転できてしまいます。たとえ内部ですごいことを実現していても、そのために操作性が犠牲になったりするようでは、洗練された先進テクノロジーとは言えないと思います」(岸本)


※1.VAIO Mediaを海外から利用することは技術的には可能ですが、海外からの利用をサポートしていません。海外からのアクセスはお客様の責任の範囲で行っていただくことになります。
※2
.ADSL 8Mbps サービスの場合の典型的な上り方向の最大速度。

concept 2
高い障壁だからこそ、挑戦する価値がある
「外からVAIO Media」プロジェクトリーダー 井原 圭吾
インターネット上で動画コンテンツを、セキュリティを保証しつつ、しかもオンデマンドで再生させるというのは容易なことではありません。それだけに、エンジニアにとっては胸躍るプロジェクトだったと言えます。解決すべき課題を整理すべく設けた5つの分科会には、口コミで聞きつけた多くのエンジニアが自発的に参加してくれて、開発は急ピッチで進みました。
井原 圭吾
井原 圭吾
技術的障壁解決のために設けられた5つの分科会
「1年ほど前、少し手の空いた状態だった時に、ホームサーバーへの個人的な興味もあって企画の岸本さんところに寄ったのです。そうしたら、『次のバージョンでは外に持ち出したい』と言われ、これはチャレンジしがいがある、ぜひやりたいと思いました。インターネット経由でホームサーバーを利用するには、どういう問題があるのか、といったこともまだ絞り込めてなかったのですが・・・・・」と、岸本の構想を実体化する推進役となった、「外からVAIO Media」プロジェクトのリーダー、井原 圭吾は語る。

したがって、井原と岸本が最初に行った作業は、問題点の洗い出しであった。整理していくと、VAIO Mediaを外から利用できるようにするには、純粋に技術的な課題から、社内外の調整作業が主となるものまで、概ね次のような課題を解決する必要があることが見えてきた。
1. 著作権/セキュリティ対策 2. IPアドレス解決 3. 通信プロトコル 4. 動画フォーマット 5. クライアントの再生機能
こうして、それぞれの課題について専門に検討する「許す」「探す」「つなぐ」「流す」「楽しむ」と名付けられた5つの分科会が設定された。井原の次の仕事はメンバーの人選だ。

「『外から家につなぐ』ということ以外、ほとんど決まっていませんでしたし、人集めには苦労するかなとも思い、関連しそうな部署には、あらゆるコネクションを駆使して声をかけました。ところが、当社のエンジニアにはこういう話が好きな人が多くいるらしく、口コミで話を聞きつけたエンジニアが、自発的に分科会に参加してくるのです。

時には、開発の実務から離れてしまったマネージャークラスが、ひそかに暖めていたアイデアを公開してくれたりしました。とにかく最初の1ヶ月間は分科会に忙殺されました」(井原)

こうして、井原や岸本が『昇竜の如く』と形容する勢いで「外からVAIO Media」の仕様は、ほぼ1ヶ月の間に固まっていく。IPアドレスの問題は、固定アドレスを持たない場合は、テレビ電話サービスなどで使う「MEETサービス」を使うことなどで解決した。動画フォーマットは、多少難航した。ADSLの上り回線でもきれいな画質を維持するための圧縮方式はMPEG4を採用することで比較的早く落ち着いたが、オンデマンドでのストリーミングをサポートするか、それともクライアントにダウンロードしてから再生する方式とするかで、フォーマットも変わってくるのだ。

「技術的にはオンデマンドのほうがはるかに難しく、ダウンロード方式を推す意見もありましたが、VAIO Media Ver.2.5の先進性をアピールするためにはオンデマンドは外せないという思いがありました。CPUが2GHzクラスというサーバーパソコンのパフォーマンスを考えればオンデマンドも十分可能であり、今回は高い技術的障壁に挑むことにしました。このようなさまざまな課題を、アーキテクチャ的にも、スケジュール的にも整合性を取っていくことが私の役割ですが、最終的な決定権も与えられていたのでスムーズに進めることができました」(井原)

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