「1年ほど前、少し手の空いた状態だった時に、ホームサーバーへの個人的な興味もあって企画の岸本さんところに寄ったのです。そうしたら、『次のバージョンでは外に持ち出したい』と言われ、これはチャレンジしがいがある、ぜひやりたいと思いました。インターネット経由でホームサーバーを利用するには、どういう問題があるのか、といったこともまだ絞り込めてなかったのですが・・・・・」と、岸本の構想を実体化する推進役となった、「外からVAIO
Media」プロジェクトのリーダー、井原 圭吾は語る。
したがって、井原と岸本が最初に行った作業は、問題点の洗い出しであった。整理していくと、VAIO Mediaを外から利用できるようにするには、純粋に技術的な課題から、社内外の調整作業が主となるものまで、概ね次のような課題を解決する必要があることが見えてきた。
1. 著作権/セキュリティ対策 2. IPアドレス解決 3. 通信プロトコル 4. 動画フォーマット 5. クライアントの再生機能
こうして、それぞれの課題について専門に検討する「許す」「探す」「つなぐ」「流す」「楽しむ」と名付けられた5つの分科会が設定された。井原の次の仕事はメンバーの人選だ。
「『外から家につなぐ』ということ以外、ほとんど決まっていませんでしたし、人集めには苦労するかなとも思い、関連しそうな部署には、あらゆるコネクションを駆使して声をかけました。ところが、当社のエンジニアにはこういう話が好きな人が多くいるらしく、口コミで話を聞きつけたエンジニアが、自発的に分科会に参加してくるのです。  |


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時には、開発の実務から離れてしまったマネージャークラスが、ひそかに暖めていたアイデアを公開してくれたりしました。とにかく最初の1ヶ月間は分科会に忙殺されました」(井原)
こうして、井原や岸本が『昇竜の如く』と形容する勢いで「外からVAIO Media」の仕様は、ほぼ1ヶ月の間に固まっていく。IPアドレスの問題は、固定アドレスを持たない場合は、テレビ電話サービスなどで使う「MEETサービス」を使うことなどで解決した。動画フォーマットは、多少難航した。ADSLの上り回線でもきれいな画質を維持するための圧縮方式はMPEG4を採用することで比較的早く落ち着いたが、オンデマンドでのストリーミングをサポートするか、それともクライアントにダウンロードしてから再生する方式とするかで、フォーマットも変わってくるのだ。
「技術的にはオンデマンドのほうがはるかに難しく、ダウンロード方式を推す意見もありましたが、VAIO Media Ver.2.5の先進性をアピールするためにはオンデマンドは外せないという思いがありました。CPUが2GHzクラスというサーバーパソコンのパフォーマンスを考えればオンデマンドも十分可能であり、今回は高い技術的障壁に挑むことにしました。このようなさまざまな課題を、アーキテクチャ的にも、スケジュール的にも整合性を取っていくことが私の役割ですが、最終的な決定権も与えられていたのでスムーズに進めることができました」(井原)
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