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InsideVAIO 「VAIO Media Ver.2.5」:開発者に聞く
02 transcode
ホームネットワークと変わらない操作感を実現
トランスコード担当 後藤 太
家の外からホームサーバーのテレビ番組を見る場合、MPEG2で録画された番組を、MPEG4にリアルタイムに変換(トランスコード)しながら送り出しています。難しかったのは、遠隔地のサーバーにある動画データを、自分のパソコンに保存されているような感覚で、シークバーを進めたり戻したりできるようにすることでした。とくに、動画像と音声の同期を維持するのに苦労しました。
後藤 太
ストリーミング用MPEG4フォーマットを開発
「外からVAIO Media」を実現する上でもっとも重要な技術的要素は、テレビ番組の動画像をインターネット回線で再生可能にする手段である。「Giga Pocket」で録画したMPEG2圧縮のファイルは、よりファイルサイズの小さな形式にトランスコードしなければ、ブロードバンドでも再生できない。圧縮のコーデックは、ソニー社内での実績も豊富なMPEG4を採用することにした。MPEG2からMPEG4へのトランスコードは、数年前には大規模サーバーによる商用サービスが計画されていたほど、パワーを必要とする仕事なのだが、最新のバイオでは、ほぼリアルタイムでトランスコードが行えるほどCPUは強力になっている。だが、これだけでは問題の解決にならない。

「ソニー内部には、リアルタイム・トランスコードを行うコーデックとしてのMPEG4技術はあったのですが、すぐ使えるストリーミング再生可能なフォーマットがなかったのです。よく混同されるのですが、MPEG2やMPEG4などのコーデックとフォーマットとは別物です。それまで使われていたMPEG4(で圧縮された)フォーマットは、オフライン再生(※3)するためのものですから、ファイル内部のデータの並び方などをストリーミング用に修正する必要がありました」と、ビデオデータのトランスコードを担当した後藤 太は語る。

図1は、オフライン再生用MPEG4フォーマットと、VAIO Media Ver.2.5で採用されたフォーマットの違いを図式化したものだ。


  図1 「オフライン再生用」と「VAIO Media Ver.2.5」とフォーマットの違い
図1 「オフライン再生用」と「VAIO Media Ver.2.5」とフォーマットの違い
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オフライン再生用では全体をダウンロードするまで再生が行えないが、VAIO Mediaでは、オーディオとビデオのデータを細かく区切ることによって、先頭のデータをダウンロードした時点でストリーミングを開始することができるようになっているのだ。もちろん、実作業はこれほど単純ではない。どういう単位で区切れば使いやすいのかなど、細かいパラメータは、後藤からMPEG4の開発部隊へリクエストやアドバイスを行いつつ、何度も実験を繰り返して決めていったものだ。

※3.ネットワークから動画などのデータをダウンロードし、一旦メモリやハードディスクに保存した後、(ネットワークから切断して)再生すること
オンデマンドトランスコードでシークバーに対応
「外からVAIO Media」の再生機能は、ただホームサーバーからのストリーミングを実現しただけではない。より先進的なのは、シークバーを使った、ファイルの途中からの再生が可能となっていることだ。DVD再生ソフトのように、データがローカルドライブにある環境なら、シークも難しくはない。しかし、リモート環境で、MPEG2からMPEG4へのトランスコードを行い、しかも、本来ストリーミング向きでないhttpプロトコルで、ということになると話は違ってくる。その主な理由を、後藤は次のように説明する。

「図2のように、MPEG2ではオーディオデータとビデオデータが独立しているため、MPEG2からMPEG4へのトランスコードは、両者を個別に行い、それをミックスして再生します。この時、先頭からの再生であれば問題ないのですが、途中から再生する場合、音声と画面が微妙にずれる可能性があるのです。というのも、両者で必ずしも同じ時間軸に切れ目があるとは限らないからです。その上、httpは時間情報管理が困難なプロトコルですから、データを受け取ったクライアント側で、オーディオとビデオを同期させる処理を行う必要があります」(後藤)

オーディオとビデオの同期については、シークに適したデータ単位の調整などのチューニングが当初なかなかはかどらず難航した。ちなみに、同期のチェックはドラマや歌番組が最適で、放送業界などでは「唇の動き」から「リップシンク」と呼ぶ。


  図2 MPEG2からMPEG4へのトランスコード図
図2 MPEG2からMPEG4へのトランスコード図
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「外からVAIO Media」プロジェクトのメンバーがチェック用に使用したのも、某有名アイドルグループの出演した番組ビデオで、何回も唇の動きを確認しているうちにファンになってしまったメンバーも多かったという。

「外からVAIO Media」での、実際のデータの流れは、ストリーミング再生中にシーク操作を行うと、インターネットを通じてホームサーバーにリクエストが伝わり、指定した時間単位からのストリーミングデータがネットを通じて送られ、クライアント側で同期をとって再生される。このような操作が、ルーティングやトラフィックによる伝送遅延など、不安定要素の多いインターネットで、ホームネットワーク環境と変わらない感覚で行える。説明しなければ気付かないところに、実は高度な技術が使われているのだ。

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