「外からVAIO Media」の再生機能は、ただホームサーバーからのストリーミングを実現しただけではない。より先進的なのは、シークバーを使った、ファイルの途中からの再生が可能となっていることだ。DVD再生ソフトのように、データがローカルドライブにある環境なら、シークも難しくはない。しかし、リモート環境で、MPEG2からMPEG4へのトランスコードを行い、しかも、本来ストリーミング向きでないhttpプロトコルで、ということになると話は違ってくる。その主な理由を、後藤は次のように説明する。
「図2のように、MPEG2ではオーディオデータとビデオデータが独立しているため、MPEG2からMPEG4へのトランスコードは、両者を個別に行い、それをミックスして再生します。この時、先頭からの再生であれば問題ないのですが、途中から再生する場合、音声と画面が微妙にずれる可能性があるのです。というのも、両者で必ずしも同じ時間軸に切れ目があるとは限らないからです。その上、httpは時間情報管理が困難なプロトコルですから、データを受け取ったクライアント側で、オーディオとビデオを同期させる処理を行う必要があります」(後藤)
オーディオとビデオの同期については、シークに適したデータ単位の調整などのチューニングが当初なかなかはかどらず難航した。ちなみに、同期のチェックはドラマや歌番組が最適で、放送業界などでは「唇の動き」から「リップシンク」と呼ぶ。
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「外からVAIO Media」プロジェクトのメンバーがチェック用に使用したのも、某有名アイドルグループの出演した番組ビデオで、何回も唇の動きを確認しているうちにファンになってしまったメンバーも多かったという。
「外からVAIO Media」での、実際のデータの流れは、ストリーミング再生中にシーク操作を行うと、インターネットを通じてホームサーバーにリクエストが伝わり、指定した時間単位からのストリーミングデータがネットを通じて送られ、クライアント側で同期をとって再生される。このような操作が、ルーティングやトラフィックによる伝送遅延など、不安定要素の多いインターネットで、ホームネットワーク環境と変わらない感覚で行える。説明しなければ気付かないところに、実は高度な技術が使われているのだ。 |
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