Pシリーズ

斬新なユーザビリティーが求められていた
今の時代にあったモバイルPCの在り方をゼロから見直した
―― ネットブック隆盛のさなか、「ネットブックではない小型モバイルPC」として発表されたのが初代Pシリーズ(type P)でした。開発にあたった皆さんは、初代Pシリーズをどのようにとらえているのですか。
伊藤:
初代Pシリーズは「今の時代に必要なモバイル像は何か」をゼロから考えてみようと決めたところから始まりました。すでに携帯電話、スマートフォンなどを使えば簡単にインターネットに接続できる時代です。それらを用いたネット利用は(PCと違って)限界もありますが、「それで十分。出先ではPCを使わなくてもいい」というお客様もいらっしゃいます。では、「外に持ち出してもらえるようなPC」とはいったいどういうPCなのか。私たちは初心に立ち返って、改めてそこから議論を重ね、今の時代にふさわしいモバイルPCの在り方を検討しました。
そこから見えてきたのは2つの解でした。ひとつは「打ちやすいキーボード」です。普通にスラスラと入力するには、ある程度のサイズが必要です。もうひとつは「情報をきちんと表示できる液晶ディスプレイの解像度」です。Windows PCとして使うからには、Webの画面もオフィスアプリケーションの画面も実用的に表示できる解像度が求められます。この2つの解から、初代Pシリーズの「ジャストキーボードサイズ」というコンセプトが生まれました。
鈴木:
Pシリーズを作るには、「使えるキーボードには絶対にこのサイズが必要なんだ」という信念が必要でした。初代Pシリーズは多くのお客さまから大きな評価をいただくことができ、私たちの考えたコンセプトを理解していただけたと確信を持ちました。
今回の新Pシリーズでも、ディメンション(寸法)を変えるとコンセプトが崩れてしまいますので、まったく同じサイズを継承しています。
「外に持ち出す新しいバリュー」を提供する新Pシリーズ
―― 新Pシリーズを開発するにあたって、初代のコンセプトを踏襲したわけですね。では、新しい部分はどこにあるのでしょうか。
伊藤:
既存のコンセプトを守りながら、かつ新しいコンセプトを編み出すのは簡単なことではありません。そこで今回、私たちは2つの「シンカ」の方向性を打ち出しました。
ひとつは深く研ぎ澄ませるための「深化」。これは初代Pシリーズから受け継いだ基本的なコンセプトを強化する、深めることです。もうひとつは、新しいユーザビリティーを実現するための機能追加である「進化」。この2つのシンカを推し進めて開発したのが、新Pシリーズです。
鈴木:
まず「深化」ですが、外に持ちだすので長く使えるようにすることがもっとも重要だと考えて、初代がSSD搭載で約4時間だったバッテリー駆動時間を最長約6時間に延ばしました。Lバッテリーなら最長で約12.5時間です。
伊藤:
Pシリーズのお客様を見ると、「長く使いたいからLバッテリーにする」という方と、「せっかく小さいPCなのだから、バッテリーも小さく軽いものにする」という方に分かれるようです。だからこそ小ささを維持したまま使用時間を伸ばす努力が必要なのだと思います。
鈴木:
ストレージはHDDモデルをなくし、SSDモデルのみにしました。SSDはサイズ、堅牢性、パフォーマンスの面でHDDより上です。CPUもまたハイグレードなものが選べるようにしました。
伊藤:
「進化」についてはユーザビリティーを向上させるものがほとんどです。例えば液晶パネル横に設置したタッチパッド。これは出先で使うシーンを増やそうと、立った状態でも使用することを想定して付加した機能です。私たちはこういう使い方を「モバイルグリップ・スタイル」と呼んでいます。
各種センサーも強化しました。初代ではGPSだけでしたが、新Pシリーズではデジタルコンパス、照度センサーを新規に搭載。また従来、HDDプロテクションに用いていた加速度センサーも、まったく新しい活用を考案しています。このようにして「持ち出したうえでの新しいバリュー」を提供しようと開発したのが新Pシリーズです。
鈴木:
初代Pシリーズで評価が分かれたのは液晶ディスプレイの解像度です。8型ウルトラワイドで1600×768ドットという高解像度を評価する声と、文字が小さすぎて読みにくいという声がありました。写真や地図を見るだけなら解像度が高いほうがが綺麗に映りますし、文字を読む場合は解像度が低いほうが読みやすくなります。高解像度、低解像度ともにメリットが違うので、意見が分かれたのでしょう。そこで相反する要素を両立させるために2つの解像度を持たせ、ワンボタンで1280×600ドットの解像度と切り替える機能を持たせたのです。ボタンひとつ押すだけですぐに解像度が替えられるので、シーンに応じて適切な表示ができます。切り替え時に再起動をすることもありません。また出荷時のフォントサイズ(DPI)設定を96から120に拡大することで、表示される文字サイズも大きくなりました。
―― 新Pシリーズの2つのシンカは、お客さまにとっての利便性、使いやすさの向上に結びついているのですね。