Pシリーズ

それがまったく新しい操作性と利便性を生んだ
初代Pシリーズも自然に「モバイルグリップ・スタイル」で使われていた
―― コンセプトがいくら優れていても、ユーザビリティーも含めて考えて作りこまれていないとユーザーの支持は得られません。新Pシリーズではユーザビリティーも大きく変化しているのではありませんか。
鈴木:
私たちも自分で初代Pシリーズを使っていたのですが、自然に「モバイルグリップ・スタイル」で使用していることがありました。というのも、液晶パネルの解像度が高いため、従来機種では文字サイズが小さかったので、(本体を両手でつかんで顔の近くまで持ち上げつつ)このように手で持って目に近づけたりしました。そういう持ち方であれば、この解像度の高さでも問題はありません。
伊藤:
それでこの持ち方のまま、つまりヒンジのあたりをつかんだ状態で操作できないかと考えたわけです。両手で持ったときは、このスタイルがホームポジションになりますよね。文字を入力するときはキーボード操作が必要ですが、Webや写真、PDFなどデータ閲覧が主になるシチュエーションでは、このスタイルのままでいいのではないかと。
鈴木:
だからジェスチャー(PCを傾ける)操作を採用しました。写真を見るときは左右に軽く傾けることで次の写真に移ったり、縦長の写真の場合はPCを回転させると写真も回転したり。これは使ってみると本当に快適です。縦長の写真を普通に表示させると、左右に余白がたくさん生まれて写真が小さく表示されますが、回転させると画面いっぱいに拡大します。
伊藤:
「モバイルグリップ・スタイル」は以前にも提案したモデル(type Uなど)がありました。そのため私たちにとっては決して新しいスタイルではないのです。しかし、実際に新Pシリーズに搭載してみて、これこそピッタリなスタイルだと実感しています。
初代に搭載してあるスティックポインターは新Pシリーズでも採用しているので、普通にキーボードを操作するときも操作性が下がることはありません。
鈴木:
それからちょっとマニアックな話になりますが、モバイルPCのヘビーユーザーの間では「寝モバ」という言葉も使われています。ベッドやソファで横になりながらパソコンを使うというスタイルです。しかし初代Pシリーズは「寝モバには向かない」という声も聞かれましたが、この新Pシリーズは寝モバにも向いています(笑)。
―― これまでの小型モバイル機器は、携帯電話やスマートフォン、PDAも含めてですが、購入しても独自の使い方をマスターするまでのハードルが高かったように思います。この新Pシリーズは、新しいユーザビリティーであるにもかかわらず、直感的な操作が可能ですね。
ユーザビリティー向上のためにあらゆるセンサーを徹底活用
―― ジェスチャー操作は加速度センサーを用いたものですが、他にもデジタルコンパス、照度センサーなども搭載しています。こちらは何に用いるのですか。
伊藤:
デジタルコンパスは地図ソフトで使います。知らない土地に行ったときに地図があると助かりますよね。ですからモバイルPCにとって地図のソリューションは非常に重要です。
初代PシリーズでもGPS機能を搭載しているので、位置情報と地図を連動させることができました。ところが方角が認識できなかったので、画面上では常に北が上を向く地図が表示されていたのです。しかし新Pシリーズではデジタルコンパスを搭載して方角がわかるようにしています。地図のソリューションもひとつ進化しているわけです。
鈴木:
照度センサーは、TシリーズやZシリーズにも搭載していたものです。周囲の明るさにあわせて自動的に液晶ディスプレイの輝度を調整するためのセンサーですが、移動が多いモバイルPCには便利な機能です。しかもディスプレイの輝度はバッテリーの消費に大きく影響するので、使用時間も伸びます。
―― Pシリーズは手軽に持ち出して常にネットに接続できるのが特徴でした。今回、ネット接続に関するシンカもあったのでしょうか。
伊藤:
出先での無線通信は私たちがもっとも力を入れている要素のひとつです。これがあればいつでもどこでもネットに接続でき、生活が楽しく豊かになります。ところが、使えば「楽しい世界」が待っているというのに、残念ながら実際に使っている方は決して多いとはいえません。私たちも、せっかく小さく持ち出しやすいPCを作ったからには、もっと多くの方々に無線通信を活用してほしいと思っています。
普及率が伸びない要因に、価格、契約の手続といった導入のハードルの高さがあるのではないでしょうか。そこで新たに使った分だけ支払うプリペイド方式(b-mobile 最大6ヵ月無料ワイヤレスネット接続パック)にも対応しました。これで、それほど頻繁に外出先で通信しない方でも、初期投資やランニングコストを抑えることができます。
またb-mobileモデルを購入したときは、商品にSIMカードもセット済みの状態で出荷されて、電話一本で回線が開通し、すぐに利用できるようにしました。価格、手続きのハードルを下げたのは、「まずは使ってみてください」という私たちからのメッセージです。
鈴木:
それから新PシリーズのVAIOオーナーメードモデルでは、無線WAN(3G)とWiMAXを同時に搭載できるようになりました。エリアの広い無線WAN、高速なWiMAXと特長が異なります。使うエリア、求めるスピードによって使い分けることが可能になったのです。これは以前から要望があったことです。