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開発者インタビュー / InsideVAIO type R master 開発者に聞く
04 Hardware
  ツインユニット実現のカギを握る1本のケーブル、かつてないアプローチで2つのユニットを接続
木樽/篠原/戒能写真
  PCI Express規格を採用し、1本のケーブルで信号と給電を実現しました。
前モデルで培ったPCIバス技術を活かし、ツインユニット接続ケーブルを開発
ツインユニット・コンセプトは、単純に本体を2つに分割しただけで実現できるものではない。斬新なコンセプトゆえに技術的な難題が数多く横たわる中、最も大きな問題は「2つのユニットをどうやって結ぶのか?」ということだった。どのような規格で接続するのか? どのくらいの距離をとっても動作に問題ないか? こうした課題を見事にクリアし、1本のケーブルで信号と給電の両方を実現してみせたのが、電気担当の木樽克典だ。ツインユニット実現のカギとなったケーブルに開発について、木樽はこう語る。

木樽:まず、ツインユニットをどのような規格で接続するのかという問題ですが、これはPCI Expressという規格を採用しています。PCI Expressは、最近のPCのマザーボード上で信号処理に使われている、シリアル方式の規格です。これを採用すれば、ある程度の距離を伸ばしても大丈夫だろうと思いました。しかし、実際にどこまでケーブルの長さを伸ばせるのか? 本体を2つのユニットに分離するという斬新な設計のPCは、VAIOでも初めての試みでしたら、その辺の検証をするためにいろいろと実験を行いました。

type R masterに付属している1.8mのケーブルですが、この長さだとメインユニットとアクセスユニットの間で信号をやりとりする際に減衰が起こってしまい、PCI Expressの規格を満たすことができないことがわかりました。そこでメインユニット側に、アナログでいうイコライザーを付加したのです。これで減衰した分を増幅して補い、受信するチップに届くときに、PCI Expressの規格を満たすように信号を調整しました。

また、アクセスユニットに届く信号は、シリアルであるPCI Expressの規格です。しかし、アクセスユニットに内蔵する周辺機器(光学ドライブやメモリカードスロットなど)を接続するためのコントローラーはPCIバスのコントローラーが一般的です。そこで、アクセスユニット内部でPCI Expressの信号からPCIバスを実現するためのコントローラーを取りつけ、アクセスユニット内部にPCIバスを作り出しました。こうすることで、アクセスユニット内に各種コントローラーを搭載し、各種の周辺機器を接続できるようになったわけです。

実は、これと似たことは、前モデルであるtype R(RC)でもやっているのです。RCは本体は1つでしたが、本体の前面にあるPCカード(カードバス)スロットをつなぐために、PCI ExpressからPCIバスを作りだし、そのPCIコントローラーにPCカードスロットをつなぐという仕組みで設計されていました。そのときの経験が、今回のツインユニットの実現にも活きているのです。
たった1本のケーブルで接続されているメインユニットとアクセスユニット。両方についている電源スイッチは、どちらを押しても有効になる。アクセスユニットだけを手の届くところに置き、メインユニットを机の下に置いても問題ない。
 
アクセスユニットの前面にあるメモリカードスロット類。これらはアクセスユニット内でPCI Expressから変換した
PCIバスにつながっているものだ。



Full HDをドット・バイ・ドットで表示できる24インチワイド液晶
戒能:最後に、液晶ディスプレイについてお話をしたいと思います。最上位モデルに付属する24インチのワイド液晶ディスプレイは、解像度が1920×1200ピクセルというWUXGAを採用しています。そのため、Full HDの画面をそのまま、ドット・バイ・ドットで表示することができるのです。また、DTPの作業をする出版・印刷業界で求められる、「A3サイズのページを見開きで、しかもトンボつきで、実寸表示する」ということが可能です。PDFファイルの表示など、文書の編集作業が多い仕事にも、このディスプレイの環境は非常に便利でしょう。

なお、この液晶を店頭で見ると、それほど明るくないと感じるかもしれません。それは、一見スペックが低いと思われるかもしれませんが、実はあえて画面の輝度を300カンデラに抑えているのです。たしかに動画を見るときは、400カンデラぐらいある方が色彩も派手になって、見栄えの点ではよいのですが、写真のレタッチなどをする場合は、ディスプレイを近くで見るので、眩しすぎて目が疲れてしまうのです。多くのユーザーが、長時間の作業に耐えられるように明るさに調整すると思います。このモニターは、実作業レベルの輝度の時に、一番階調表現が正しくなるように調整されています。階調表現の正確さを追うために敢えて輝度は抑えているのです。流行のクリアブラック液晶を採用していないのも同じ理由です。こういうと、液晶モニタが静止画専用に思われるかもしれませんが、オーバードライブ機能を搭載しているので、動画の表示クオリティーも一級品だと自負しています。高精細の美しい表示で快適に作業をしていただけます。

篠原:作業環境ということで、キーボードの話もさせてください。今回のtype R masterのキーボードは、好評だったパームレストを復活させました。もちろん、復活といっても以前と同じだけのものではありません。よく見るとわかりますが、小さいディンプル(穴)を空けてへこませているのです。だから、非常に肌触りが良好で、見た目も映える仕上がりになっています。また、ハイエンドモデルということで、メールやブラウザを起動するための専用キーは上級者には不要なので外し、可能な限りサイズをコンパクトにして占有スペースを抑えました。キーのサイズやキーピッチなどは変わらないので、快適に使っていただけるはずです。

また、最近はキーボードやマウスで無線方式を採用するのがトレンドになっていますが、今回のtype R masterでは、あえてケーブル方式を採用しています。これは、映像編集などは長時間の作業となるためです。無線方式の場合、途中で電池が切れてしまうこともあるので、作業中のトラブルを少しでも軽減するという点を考慮して、より信頼性の高いケーブル方式を採用するのがベストだと判断したのです。
液晶ディスプレイには便利なUSB切り替え機能が付属。PC本体を3台までつなげられ、液晶のモニタのUSBポートにつけた1組のキーボードとマウスを切り替えて使える。
 
復活したキーボードのパームレスト。使わないときはキーボードカバーにもなり、ほこりが混入するのを防ぐことができる。ディンプルつきで触った感触も良好。
レーザー式の新型マウス。解像度も800dpiと高いので、大画面・高解像度のディスプレイでも、画面の端から端までの移動がワンアクションで可能。1ドットずつ修正していくような緻密な作業の際にも効果を発揮する。
まとめ
Full HDの動画編集をPCで快適に行う――そんな時代がいよいよ到来した。VAIO type R masterは、そんな新時代の扉を開く革新的なAVマシンだといえる。動画編集においてもユーザーにストレスを感じさせないハイスペック。そして、かつてないほどの拡張性の高さ。それでいながら、洗練されたシンプルなデザインと、静かな部屋においても邪魔にならない静粛な稼働音。あらゆる面でオーナーを満足させる高級感を備えた1台だ。ぜひVAIO type R masterに触れ、Full HD時代の扉を開いてほしい。
 
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