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Xシリーズ

02 デザイン
“特別なVAIO”という思いを込めて生まれた「リジッドアークデザイン」という
シンプルで斬新な形状。薄さの演出だけでなく、品質や使いやすさも実現した。
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  • 03 メカニズム
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フルフラットボディ 〜筐体全体が約13.9mmという驚異の薄さ〜

―― Xシリーズを一目見ただけで、その特長が伝わってきます。コンセプトが非常にわかりやすいモデルですが、デザイナーとしてはどのようなスタンスで取り組んだのでしょうか。


森澤:

Xシリーズの約13.9mmという薄さは、これまでの既成観念を打ち破る、ありえないと考えられていた数値です。その薄さを表現するためには、全体が同じ薄さのフルフラットなボディにすること。それは担当デザイナーとして絶対に譲れないことでした。従来のノートPCで薄さを強調するときは、「最薄部約○mm」と記載されてきました。それは本当の意味での薄さではありません。

今回は、全体が約13.9mmと偽りのない薄さ。まさに直球勝負です。バイオノート505エクストリームの開発から約6年の期間がありましたが、私はその後継モデルのデザインを手がけたいと思い続けていました。今回の話を聞いたとき、やっとその機会がまわってきたと思い、いつもにも増して意欲的に取り組みました。

―― 「リジッドアークデザイン」は、弧を描いたくぼみがPCの側面を囲っています。このデザインにはどのような意図があるのですか。


森澤:

当初から設計側のコンセプトとして「1枚の板のような薄さと軽さ」というイメージがありました。その「最薄、最軽量」という特長をどう表現するかが、デザインにおける課題でした。B5サイズで約13.9mmという厚さは、PCとしては画期的な薄さです。しかし、例えば雑誌で同じ厚さのものを見ると、分厚く感じるでしょう。つまり約13.9mmの厚さを持つ長方体をそのまま見せたら、決して薄い印象を与えないのです。

そこで「心で感じる薄さ」をいかに演出するかを突き詰め、極力飾り的な造形はやめて、使い勝手を向上させるシンプルなデザインを心がけました。その回答が、縁が弧を描くようにそぎ落とされたデザインの「Rigid Arc(リジッドアーク)」です。側面が縁を面で切り落としたのに比べて、弧を描いた形状は光が面として反射するのではなく、直線として反射するため、シャープな印象を与えます。

さらにこの形状の特長は、外からの圧力に強く、堅牢性が高まることです。また、薄いと液晶を開きにくくなるものですが、内側にそぎ落とされているために指がかりがよく、開きやすくなります。この形状によって、心で感じる薄さと使いやすさ、そして堅牢性まで実現することができました。


斉藤:

メカ設計の立場でいえば、この「リジッドアークデザイン」はアルミの絞りで作るには非常に難しい形状なのです。この仕事を任されたときに自分で計算してみたのですが、必要な厚さを14.5mmとはじきました。しかし開発責任者からは13.9mmといわれて、どこで0.6mmを削るんだと正直困りました。私自身もこれほどまでの薄さには経験がありません。

そこで初期の段階から素材の選定に取りかかり、検証しながら進めました。素材によって作り出せる形状が異なるので、デザイナーにもその情報を逐次入れるようにしました。素材の特性を無視したデザインをしたら、この薄さの筐体にパーツをすべて収めるのは不可能です。森澤と「この素材ではこういう形は無理」「だったらこう形を変えたら?」といった情報交換しながら、いろいろな制約を加味した上でデザインをおこしています。


左は初期のモックアップ。両方とも同じ厚さだが、弧を描く「リジッドアークデザイン」(右)のほうが圧倒的に薄く見える。
左は初期のモックアップ。両方とも同じ厚さだが、弧を描く
「リジッドアークデザイン」(右)のほうが圧倒的に薄く見える。
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くぼみがあることで液晶が開きやすくなっている。
くぼみがあることで液晶が開きやすくなっている。
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心で感じる薄さを「リジッドアークデザイン」で実現させた森澤(デザイナー)。
心で感じる薄さを「リジッドアークデザイン」で実現させた
森澤(デザイナー)。
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作っているのは特別なVAIOという手ごたえ

―― これまでのVAIOのロゴの色はシルバーでしたが、Xシリーズのロゴはローズゴールドという特殊な色です。ブランドロゴのカラーを変えた意図は何でしょうか。


森澤:

最初は通常のVAIOと同じようにシルバーのロゴを予定していました。しかしXシリーズは特別なVAIOと認識しています。だから、どこから見ても特別なVAIOという印象を演出したかったのです。ところが、薄さというものは側面から見ると極めて大きな特長ですが、正面から見るとそれが伝わらない。せっかくですから正面から見ても特別なVAIOを演出したいと考えて、ロゴの色をローズゴールドにしました。

―― 従来のVAIOの上位機種はシリンダーフォルムが特長でしたが、Xシリーズではシリンダーフォルムを採用しなかったのですね。


森澤:

シリンダーフォルムでは、シリンダー型バッテリーの横側にDCジャックと光る電源ボタンがあり、直線上に全ての電源関係のデバイスがまとまっているというのがコンセプトでした。しかしXシリーズでは薄さを追求してバッテリーの位置が変わったこともあり、これまでのシンボルであったシリンダーフォルムはコンセプトから外れると考えました。

そこで最薄という新しい特長が感じられるよう電源ボタンも新たにデザインし直しました。Xシリーズは開いた状態では、電源ボタンが板の中で流れるように光っています。閉じた状態では本体の外周をなぞるラインの中で緑色の透明な光が一筋灯っています。その光が特別なVAIOという存在感を示しています。ここはデザイナーとして非常にこだわりをもったところで、最初に電源を入れるときには、開発をしている現場の長野に呼んでほしいと頼んでいました。初めて緑色の電源ボタンが光る瞬間を自分の目で見たかったのです。

―― デザイナーという立場は単に形を決めるだけでなく、素材選びなど多方面に関わったのですね。


森澤:

デザインとは形を作るだけではありません。商品としての印象、生産効率など複合的な条件を考慮した上で、デザインを考えなくてはなりせん。それには設計メンバーとの密なコミュニケーションが欠かせません。


斉藤:

素材の部分でメカ設計として苦労したのは、薄いながらも強度を出すことでした。極端に薄いと通常は強度も下がるものです。強度を上げるためにいろいろな試行錯誤を繰り返しました。中には新素材の開発もありました。例えばカーボンは通常、層を重ねて厚みを出すことで強度を高めていきますが、カーボンの中に特殊なシートを挿入するハイブリッドカーボンという新しい素材を開発することで、薄さと軽さと強度を両立させています。


淡いローズゴールドが“特別なVAIO”を演出。
淡いローズゴールドが“特別なVAIO”を演出。
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側面とボタンが緑色に光る電源ボタン部分。
側面とボタンが緑色に光る電源ボタン部分。
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試行錯誤を繰り返し、薄さと強度を両立させた斎藤(メカ設計)。
試行錯誤を繰り返し、薄さと強度を両立させた斎藤(メカ設計)。
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