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Zシリーズ

02 ハイパフォーマンス
「ライバルは、旧Zシリーズ」を合い言葉に、
最新テクノロジー、持てる技術、ノウハウをすべて注ぎ込んだ。
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  • 01 コンセプト
  • 02 ハイパフォーマンス
  • 03 モビリティー
  • 04 機能美

限界を超えた先に見つけたもの

―― Zシリーズは、モバイルPCとしてのVAIOのフラッグシップ的な位置づけです。そういうフラッグシップモデルにふさわしいスペックとして、新Zシリーズで目指したことはどういうものでしょうか。


鈴木:

私はプロジェクトマネージャーとして、Tシリーズなど10インチ前後の液晶を搭載したVAIOを担当してきました。旧Zシリーズが開発されるようすを横から眺めながら、私は「Zシリーズは、限界まで到達できたな」と思っていました。しかし今回、自分がZシリーズを担当することになって「旧Zシリーズが到達した限界を超えることは可能なのか?」と戸惑いました。その一方で「限界の先を求められているのだから、もう何をやってもいいではないか」という達観した気持ちもありました。そう考えるとさらに取り組む意欲がわいてきて、チームメンバーに「出し惜しみせず、全員が持っているものをすべて出せ」と号令をかけました。何しろZを超えられるのはZだけですから。

言うなれば私たちがライバルとして想定していたのは旧Zシリーズ。ですから「どの点においても旧Zシリーズを超える」という固い信念を持ってパフォーマンスを詰め込むことに注力し、開発に取り組みました。

―― さきほど基礎体力(スペック)を強化したと伺いました。どのような点で基礎体力は強化されているのですか。


鈴木:

新しいZシリーズを作るにあたって「出し惜しみしない」と決めたので、私たちが持てる技術、ノウハウ、テクノロジーをすべて注ぎこみました。そのため、新しいモバイル用CPUであるCore i7/ i5プロセッサーの採用、クアッドSSD、1ランク上の外部グラフィックアクセラレーターの搭載、フルHDに対応した高解像度液晶パネルなどを搭載しました。

従来のアーキテクチャーではCPUとその他の機能(メモリ、ビデオなど)の間がチップセット経由で接続されていました。新しいHM57 Express チップセットでは、CPUとメインメモリーがダイレクトに接続され、高速化とチップセットの小型化を実現しました。
デュアルコアのCore i7/i5は「ターボ・ブースト テクノロジー」と「Hyper-Threading テクノロジー」が特長です。ターボ・ブースト テクノロジーは発熱に余裕があるときに一方のコアのクロックを上げて性能をアップさせる機能です。逆にCPUの負荷が低いときには必要のないコアの電力をカット、あるいはクロックを下げて電力消費を抑えます。Hyper-Threading テクノロジーは、1つのコアを仮想的に2つのコアに見せる機能。デュアルコアですので全部で4つのコアがあるように振る舞い、同時に複数の処理を楽々とこなせます。

SSDは私が大好きな技術で、個人的にもこだわりを持って取り組みました。それで搭載したのが世界初となるクアッドSSDです。これは2つのコントローラーを持つSSDを2基搭載し、なおかつRAID構成にしています。4つのコントローラーにそれぞれSSDが接続され、4つ並列に処理をしているため非常に高速なアクセスが可能で、HDDに比べて約6.2倍のスピードが出せます。
実はこのクアッドSSDは、今回のZシリーズ専用で新規に開発したものです。最近はコストを抑えるために標準モジュール化するのが風潮ですが「インターフェースのチャンネルは余っているのだから、4チャンネルのSSD RAIDを組みたい」と押し切ったのです。

もうひとつ、私は液晶の画素数も大好きな要素です。旧Zシリーズの1600×900ドットの解像度も13.1型ワイド液晶であることを考えれば十分な解像度ではあります。しかし、その上にフルHDである1920×1080ドットがあります。これならブルーレイディスクの映像がドットバイドットで正確に表示できます。1600×900ドットの1.5倍の表示領域がありますから、ビジネス面でもExcelのワークシートを開いた場合などは多くの情報が表示されます。よく「解像度が低くても、スクロールすれば問題ない」という人もいますが、表全体が俯瞰して一覧できることで、さらに作業効率が向上するものです。
解像度を高くするには、グラフィック性能の向上も必要です。そこで外部グラフィックアクセラレーターもGeForce GT 330M GPUと専用ビデオメモリー1GBを搭載し、従来よりも大幅な高速化を図りました。


河田:

またダイナミック・ハイブリッドグラフィックスも進化を遂げました。従来は外部グラフィックアクセラレーターを有効にするSPEEDモードと、無効にしてバッテリー持続を優先にするSTAMINAモードの2つでしたが、使用状態にあわせて自動で調整するAUTO モードが追加されました。私自身もPCを使っていろいろな作業をしていますが、お客さまも「パフォーマンスを必要とする作業」と「それほど必要としない作業」を繰り返しながら、仕事をしているのではないでしょうか?

しかし意識的にグラフィックモードを切り替えるのは面倒なことです。そこでAUTOモードを搭載し、ACアダプター、HDMI、DVIの状態に応じてグラフィックモードを自動的に切り替えられるようにしました。モードの切り替えに再起動は必要ないので、お客さまが意識することなく最適な状態で使用することができます。ただこの機能は、複数の部品、ソフトウェアなどを制御する必要があるため、実装するのは非常に困難でした。


鈴木は、かつてTシリーズも担当していた。
鈴木は、かつてTシリーズも担当していた。
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クアッドSSDを実現するために新規開発したSSDモジュール。
クアッドSSDを実現するために新規開発したSSDモジュール。
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フルHD(1920×1080)に対応した13.1型ワイド液晶。
フルHD(1920×1080)に対応した13.1型ワイド液晶。
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ダイナミック・ハイブリッドグラフィックスのモードを切り替える、三角形のスイッチ。
ダイナミック・ハイブリッドグラフィックスのモードを切り替える、三角形のスイッチ。
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旧Zシリーズからソフトウェア設計を担当した河田。
旧Zシリーズからソフトウェア設計を担当した河田。
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予想以上の性能に開発者自身が驚愕

―― サイズや重さを犠牲にするなら、機能を満載するのも比較的容易だと思われますが、小型、軽量を維持したままで、これだけの機能を詰めこむのはたいへんだったのではないですか。


笠井:

私たちには詰めこめる確信がありました、必ず達成できると。何しろ旧Zシリーズ開発の際、横から「それは無理じゃないかな」と眺めていたことを実際にやり遂げたわけです。今回も「できないはずはない。やろうと思えば必ず実現できる」と思っていましたし、開発チームのメンバーの意気込みからも手ごたえを感じていました。そうは言ってもガッツだけで成し遂げられる事ではありませんので、今回の設計開発の重要なテーマとして、従来からVAIOで取り組んできた高密度配線、実装、組み込み設計の更なる進化を掲げて取り組みました。過去、我々が蓄積してきた配線品質、放熱技術、堅牢データーをはじめとするあらゆる設計データーのシミュレーション結果、それに対しての実測値のレビューを行い、品質を満たすことを大前提に設計手法の更なるブラッシュアップと、詰め込み設計における新たなアプローチを確立しながら何とか目標を達成しました。

唯一懸念していたのはタイミングです。あまり無理に詰め込むと、当然開発期間も余計にかかります。Zシリーズの商品コンセプトを実現すること、我々の高密度設計の進化、発売日を天秤にかけながら機能、デバイス選定等の仕様見極めは本当に難しかったです。

―― これだけの機能を満載した効果は出ていますか。


高木:

予想以上の効果が出ています。例えば最近のデジタルカメラは画素数も高いのでプレビューにも時間がかかるようになります。しかし新Zシリーズであれば大量の写真を収めたフォルダーを開いたときに、一瞬でプレビューが表示されます。大量のデータのコピーも一瞬です。私などは最初、あまりに速く終わったので「エラーか?」と思ったくらいです。ベンチマークの数値からそれだけの性能が出ることは知っていましたが、実際に見ると驚きます。作った本人が驚いたのですから、この速さはお客さまにも必ず満足していただけると自信を持っています。

―― 最近はプレゼンテーションのファイルに映像や音楽を組み込むことも珍しくなく、ファイルを開くのも重くなりがちです。デモの最中に写真がゆっくりと表示されるのは興ざめですからね。


笠井:

今回さまざまな新機能に挑戦しましたが、ひとつの機能だけ性能が突出したら、ほかの部分がボトルネックになってしまいます。そうならないように、ボトルネックとして見えた要素はすべてつぶしながら、最高のパフォーマンスを目指しました。

旧Zシリーズでも技術の集大成という言われ方をされましたが、私たちにとっては集大成というゴールを持っているわけではありません。限界を突破した最高の到達点を目指したら、こうなったということです。新Zシリーズも同様に、「現在のテクノロジー、テクニックではこれが精一杯」という限界まで突き詰めた作品なのです。
客観的に自分たちの姿を見れば、毎回限界を突き詰めて何ともつらい思いをしているなとも思うのですが、開発に携わっていると最後には結局、さらなる極み、限界を目指してしまいます。それがVAIOなのです。そのスタンスはどの機種でも変わりません。


電気を担当した高木。
電気を担当した高木。
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開発者自身を驚かせるほどのパフォーマンスを見せた新Zシリーズ。
開発者自身を驚かせるほどのパフォーマンスを見せた新Zシリーズ。
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限界を追求するのがVAIOの伝統と語る、プロジェクトリーダーの笠井。
限界を追求するのがVAIOの伝統と語る、プロジェクトリーダーの笠井。
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