Zシリーズ

シンプルさのなかに見える本物の高級感。
シンプルなデザインが醸し出す高級感
―― 新Zシリーズをちょっと拝見しただけで、デザインが大きな変化を遂げたことがわかります。どのようなコンセプトでデザインをしたのですか。
平野:
Zシリーズでは、ハイパフォーマンスとモビリティーの両立が柱ですから、それをデザインでも表現したいと考えました。まず、贅肉をそぎ落としたシンプルでクリーンなデザインにしたい。そのうえで鋭さを感じさせるエッジがほしい。それがパフォーマンスの高さ、軽さ、薄さを表現できるだろうと考えたわけです。
それで思いついたのが、2枚の板状に見える構成です。これまでのVAIOでは一体に見せる手法が多かったのですが、横から見ると「2枚の板の間に自然な隙間を存在させる」ことでシャープな印象を作り出し、モバイルPCとしての軽さ、薄さ、パフォーマンスの高さが表現できると思ったのです。それがこの「ダブルプレート・デザイン」です。
クリーンな外観のためにパーツ構成を見直した結果、筐体を構成するライン(線)が圧倒的に減っています。他のシリーズや旧Zシリーズと比べても非常にシンプルだと思います。一番のコンセプトが表れているのは、サイドビューです。ハイパフォーマンス、モビリティーの両面で妥協を許さない作りなので、デザインでも妥協はできません。
また今回は、オンでもオフでも使えるモバイルPCというコンセプトなので、メインカラーをダーク系ではなくあえて明るめのシルバーとしました。
―― シリンダー部分からパームレストまでが一体になっていますね。これも旧Zシリーズからの大きな変化ではないでしょうか。
原田:
その部分は1枚のアルミの板で作っています。旧Zシリーズもパームレスト部分はアルミでしたが、プレス成型という手法で成型していました。今回は押し出しで大まかな形を作り、その後、切削するという手法を取りました。これでヒンジからパームレストまでボトム上部が1枚のアルミで包まれるという、一体感の極めて高いデザインができます。
特に美しいのは、ヒンジ部分と継ぎ目がなく、ラインがきれいに見える側面です。プレス成型では両側面とヒンジ部分の形状がうまくつながりません。この側面の美しさが今回のデザイン上の見せ場のひとつです。しかも切削はアルミの厚みを自由に調整できるので、強化したい箇所だけを肉厚にすることも可能です。今回はアルミパネルの天面を薄くし、側面と角を厚くすることで、軽さは保ったままで特に本体を斜めに落下させたときの強度を上げています。
機能、使いやすさを伴うデザインの魅力
―― もうひとつ目を引くのは、ダイナミック・ハイブリッドグラフィックスのスイッチですね。三角形のスイッチは珍しいと思いますが。
平野:
この三角形のスイッチでAUTO、STAMINA、SPEEDの3つのモードを切り替えます。初めに横スライド、T字型、L字型のスイッチなどいろいろな案を考えたのですが、せっかくの目玉機能なのでまったく新しいスイッチのデザインにしたかったのです。三角形にしたことで、ひとつひとつのポジションに確実に入るうえ、あるモードから残り2つのモードに切り替えるときに、どちらにも1アクションで移動できます。
原田:
メカとしてはこのスイッチを作るのはたいへんでした。しかし、実際に使ってみたらAUTOモードによる自動調整のバランスが非常に良くて、お客さまはAUTOモードに固定したまま使うのではないかという気がして、メカ担当としては少し残念です(笑)。
―― 全体として派手さよりも使いやすさが感じられるシンプルなデザインだと思います。平野さんはこれまで、どのようなデザインを手がけられてきたのですか。
平野:
私にとってVAIOのデザインを担当するのはこれが初めてです。それ以前はウォークマンや携帯電話のデザインを担当していました。PCの構造は、折りたたみ式の携帯電話と通じるものがあり、薄く見せる手法などは共通していました。新Zシリーズでは液晶の上部にベゼルを左右に横断する細長いバンパーが付いていますが、これは私が携帯電話のデザインを担当していたことの影響といえるかもしれませんね。多くのPCでは液晶周辺にたたんだときにクッションになる丸や小判型のゴムをいくつも配置するのですが、今回はバー状のバンパーを付けました。そのほうがシンプルに見えますから。
笠井:
今回ユーザビリティーを向上させるための機能を追加していますが、使いやすさだけでPCに対する愛着が生まれるわけではありません。いくら圧倒的なパフォーマンス、最新のテクノロジーを持っていたとしても、かっこよさが感じられなければ愛着はわきません。性能に優れ使い勝手もよく、そのうえに高いデザイン性を兼ねあわせていて、初めて愛着がわくのではないでしょうか?
―― 愛着を持つためには、単なるかっこよさではなく、中身を伴うデザイン性が大事ということですね。
笠井:
そうですね。性能を伴う機能美。見た目が性能とマッチしていること。それぞれの機能が、意味のあるものとして有機的に結びついている美しさが大事なのだと思います。このZシリーズは、パフォーマンス、モビリティー、機能美というすべての面で究極のPCに仕上がったといえると思います。
鈴木:
私はさまざまなVAIOの開発に携わってきました。多くの場合、「開発者として作りたい、使いたいモバイルPC」という観点で手がけてきましたが、今回の新Zシリーズは違います。とにかくハイスペックで、モビリティー、ユーザビリティー、デザイン性、すべての面でリミッターを外して、考えられるあらゆるテクノロジーや技術を注入してできあがったのが、この新Zシリーズなのです。私自身にとっても純粋に「ユーザーとして手に入れたい究極のモバイルPC」なのです。この製品を一人でも多くのお客さまに、手にとって心地よさを体感していただきたいですね。