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type P 開発者に聞く

04 Craftmanship

自分を表現するパーソナルな存在でありつつ、ものの本質を理解した大人が選ぶプレミアムなモバイルPC。このコンセプトをデザイナーから受け取り、製品化に携わったメカ、電気、ソフトなどのエンジニアたち。そこには不屈のクラフトマンシップがあった。

小さいものを作ることへの挑戦

━━ このサイズに必要な部品を盛り込む際、どんな課題があったのでしょうか?

花塚 横幅はキーピッチを決めたら、必然的に決まってくる。そうなるとスペースを奥行きに求めていくんですけれど、今回は手でつかめるサイズでありつつ、カフェテーブルに置きたかったので奥行きを大きくできない。しかも決められた部品を置くだけで、内側のスペースがいっぱいになってしまう。

川上 マザーボードは最初にこれだけの回路を入れましょうってところから始め、それをシミュレーションしながら実際にCAD上で配置していきます。でも、今回は最初から入る気がしなかった。たとえば基板のためのすき間が6mmなのに部品が7mmだったりしたのです(笑)。

鈴木 小型化をするにあたり、ディスプレイ出力端子を外付けアダプターに出すなどの割り切りをしています。ただ基本的な性能や使い勝手を損なわないチャレンジは最後まで続けました。私が衝撃的だったのは電気回路の設計で、マザーボードにメモリーカードスロットを重ねる決断をしたこと。あれが小型化には大きく寄与したはずです。

川上 前述のとおり、普通に置いても部品が収まらない。そういうなかで、メモリーカードスロットはマザーボードに配置しない方が、他の高速信号にも影響を与えないので、ある時期から取ってそれ以外の部品をマザーボード上に収めることを検討しました。その結果多くの部品は収まったのですが、メモリーカードスロットは外に出たまま。最終的にはマザーボードの下に重ねました。

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マザーボードのCAD設計図。最終的に要件を満たすまで何度もやり直しをした。その回数は通常の数倍だった。


持ち運ぶ機器だから疎かにできない耐衝撃性

━━ モバイルPCでは耐衝撃性、堅牢性なども注目されています。外に持ち出すことがコンセプトとなっているtype Pでは、どのような工夫がされているのですか?

川上 通常の基板は緑色のリジッド部分しかないのですが、茶色い部分は屈曲性のある、通常FPC(Flexible Printed Circuits)=フレキシブルプリント基板と呼ばれていて、普通はコネクターを介してフレキシブル基板とリジッド基板を接続するのですが、始めからフレキシブル基板とリジッド基板が合わせて積層されて、一枚の基板(=フレックスリジッド基板)になっています。

最大の利点は、リジッド部とフレキシブル基板を接続するコネクターが不要になること。コネクターの配置スペースが不要なのはもちろんの事、落下時にコネクターが外れてしまったり、ずれてしまうことがあるのですが、それが防げる。また、接続ポイントが減っている分、高速信号への悪影響も減らすことができ、信号品質の向上が期待できます。

鈴木 今回おそらくPCとしては初めてフレックスリジッド基板を採用しています。これがなかったらtype Pは、まったく別の製品になっていたはず。

川上 フレックスリジッド基板自体は、携帯電話やデジタルカメラには多用されているものです。ただ、それらの機器はもっと小さいので基板が小さく、電力的にも、コスト的にもハードルが高い。2007年頃から評価を開始し、type Pのプロジェクトが始まるころ、ようやく実用化の目途が立ったんです。

━━ 市場のニーズ、商品の企画、技術の進化のタイミングが重なったわけですね。いつも、こううまくあうものですか?

川上 稀ですね。技術が先行していても製品のニーズが近づいていかないことがあるし、製品側でこういう技術が必要だけれど、あと数年は待たないとダメなこともある。

もちろんコスト面の折り合いが付かないことも多い。そういう意味では技術とニーズがタイミング良く合いました。

花塚 あとこれだけ筐体を薄くすると弱くなってしまうので、他のモデル同様、シャシーにはカーボンが練り込まれている材料を使っています。これにより、強度は保ちつつ薄肉化に成功しています。

鈴木 VAIOオーナーメードモデルでは、ストレージでSSDを選択できるようにしています。SSDは振動に強い、そして高速アクセスなどモバイルPCにはメリットのあるデバイスです。そうした先進的なデバイスをtype Pでも選択できるのも大きな魅力ではないかと思っています。

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モバイルPCにおいてフレックスリジッド基板(茶色い部分)を採用。使い勝手と小型化の両立に寄与。

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フレックスリジッド基板を手にする川上。

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フレキシブル基板とリジッド基板がコネクターレスでつながっているフレックスリジッド基板。小型化や耐衝撃性などに大きく寄与している。

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マグネシウム合金シャーシを採用することで、強度を保ちつつ薄型化に成功している。


スタミナ性能向上への取り組み

━━ スタミナ性能について教えてください。

鈴木 スタミナはこのモバイルPCにとって重要です。決まった容量のバッテリーに対して、何時間持たせるかは電気回路や、ソフトの工夫で改善していかなければいけません。そのために「スタミナ検討会」を実施し、そこで必ずできること、できそうなこと、チャレンジングだけれどトライするアイデアを挙げてひとつひとつクリアしました。

━━ 具体的にはどういうことをするのですか?

小野 たとえば外部機器用のアダプターを外したときには、本体では使うことのないVGAポートやイーサネットの回路は電源を切る。これをしたらバッテリー駆動時間は何分延びますというのを積み上げていきます。

鈴木 本当に細かい話を挙げると、ICの部品自体に省電力モードを持つものがあるとします。しかし、実際にはあまり使われていないことがあるんです。注意して設計しないと不具合を起こしたりする可能性があるので。しかし、そうした細かい積み重ねがスタミナ性能につながるので、より良い製品を作るために私たちは挑戦し続けています。

小野 それがあるからこの商品を買おうと思うところにはいくかはわからないし、縁の下の力持ちで隠れてしまう苦労なんですけれど、エンジニアとしては、とてもチャレンジをしています。

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スタミナ性能の向上について振り返る開発陣。


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