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開発者インタビュー / InsideVAIO type T 開発者に聞く
02 Display
藤田清人写真 白色LEDのメリットを最大限に活かし、大画面でも薄く・軽く・省電力のディスプレイを搭載!藤田清人(液晶ディスプレイ設計)
10.6型から11.1型に大画面化、それでも60gも軽いディスプレイを実現しました。
薄・軽・スタミナも兼ね備えた新開発のディスプレイ
新type Tの超薄型ディスプレイ。それを実現するカギとなったのが、「白色LED」という先進的な技術だということをご存知だろうか。従来、液晶ディスプレイといえばバックライトに蛍光管を使用するのが一般的だったが、白色LEDを採用することで、ディスプレイの薄型化・軽量化・省電力化の3つを実現したのである。白色LEDのメリットと、開発上の技術的なチャレンジについて、液晶ディスプレイ設計担当の藤田清人はこう語る。

藤田:白色LEDは、今後多くのPCが採用してくるはずです。そこで考えたのが、単に蛍光管と置き替えただけではダメ。白色LEDのメリットを最大限に活かした製品にしたいということでした。新type Tでは、白色LEDのメリットを活かして、液晶ディスプレイの薄型化、軽量化、そして省電力化に徹底的にこだわり、蛍光管よりも大きなアドバンテージを狙ったんです。

従来、白色LEDは携帯電話やPDAなど、画面サイズの小さい製品で使われてきた。以前は、蛍光管に比べて発光効率が低かったため、小さい液晶ディスプレイで使ったときだけ、消費電力的にメリットが出たのだが、ここにきて発光効率が飛躍的に向上し、蛍光管と同じレベルになったのだ。今回の新type Tではインバーターなどの回路を白色LED専用に設計するというあわせ技で、スタミナをさらに伸ばすことに成功した。また、蛍光管に比べると白色LEDの方が小さいので、その分だけディスプレイを薄型化することが可能になり、その分だけ重量も軽くなった。

藤田:従来の蛍光管で作った場合と比較すると、同じ11.1型でも厚さで半分、重さで3分の2と、白色LEDのメリットを十分に引き出すことができました。具体的なことはこの後お話しますが、初代type Tの10.6型から11.1型へと画面サイズが大きくなっているにも関わらず、液晶ディスプレイの重さは60g軽くなりました。
白色LEDは発光効率も良く、鮮やかな再現性で視認性も向上。従来の蛍光管では実現不可能だったメリットを数多く実現した。
ガラス、システム基板、インバーター、すべての部品で薄型化を達成
液晶ディスプレイは、実はけっこう多くの部品で構成されている。そのため、目に見えるかたちで薄いディスプレイを実現するためには、液晶モジュールの全体にわたって、各部を薄くする努力が必要だ。そこで新type Tでは、液晶ディスプレイの構造を根本から見直し、かつてないアイデアを投入することで、極めて薄いディスプレイを実現した。

藤田:液晶ディスプレイでは、液晶材を封入するために2枚のガラスを使用しています。このガラスの厚みは0.5mmが業界標準ですが、今回はガラスを化学薬品に浸けることで0.2mm削っています。ガラスは表と裏にあるので合計で0.4mm、標準のガラスを使うよりも薄くしています。
白色LED自体も薄型化に大きく寄与しています。蛍光管は2mm程度の厚さがありますが、新type Tに採用している白色LEDは0.6mm。これだけで1mm以上薄くできます。また、導光板という部品があります。これは、光源からパネル全体に光を均一にまわすためのものですが、これも白色LEDのサイズにあわせて導光板を薄くしました。現状ではそのための技術を持っているのが数社しかなく、そこにお願いして新type T専用の薄い導光板を開発したのです。こんなところにも、先進的で高度な技術が投入されているわけです。
それから、液晶ディスプレイの表示を制御するためのシステム基板があります。従来は、液晶モジュールの裏側に置いていたのですが、その方法だと厚みに影響してしまうので、今回はパネルの下端に配置しました。実はそのまま場所を移動させたのでは、サイズの問題で収まらないので、LSIのパッケージングや部品の配置をすべてやり直して、従来比で面積3分の1の基板を設計しました。写真で見るとわかりますが、回路的にはほぼ同じものが入っています。
図版:白色LEDの採用により、システム基板を小型化・軽量化
白色LEDの採用と導光板の開発で薄型・軽量化に成功。またシステム基板の小型化を行い、レイアウトを工夫し、ガラスセル自体も薄型・軽量化している。
薄型化と同時に強度を高め、歴代VAIOノートでトップクラスのテスト結果に
液晶ディスプレイが薄くなった分、それにあわせて必要になるのが強度だ。新type Tでは、カーボン素材を使うことで強度を確保しているが、実は薄くした液晶そのものでも強度を増すための工夫をこらしている。その結果、品質保証の試験ではVAIOノートの中でもトップクラスの強度があることが確認された。

藤田:従来のPCの場合、液晶が割れてしまうのは、液晶全体ではなく、どこか1点に強い力が加わったときが多いのです。そのとき、パネルの後にシステム基板や配線ケーブルがあるため、背の高い部品から先に当たって、そこだけに大きな力が加わってディスプレイが割れてしまうのです。新type Tでは、パネルの後に何もなくてディスプレイが完全にフラットになるように設計しました。そのため、1点に力が加わったときでも圧力を全体的に分散する構造になっています。
また、ガラスを薄くしたことも液晶が強くなった要因のひとつです。一般的に、ガラスを薄くした方が割れやすいと思いがちですが、実は薄い方が、しなってたわむので割れにくくなるのです。さらに、今回の液晶ディスプレイは、キャビネットの中にハメるだけでネジ留めする構造をとっていないので、ネジが支点になって割れてしまうということがありません。薄くすると同時に強度も出す。まさにあわせ技の世界といえますね。
初代type Tではベゼルの内側にあったインバーター。新type Tではメインボードの中に収めたため、無線LANのアンテナだけがある。これで11.1型液晶の搭載が可能に。
液晶、導光板、レンズシートといった、液晶モジュールを構成する部品群。これらの部品で白色LEDへの対応と薄型化を行い、超薄型の液晶ディスプレイが完成した。
03 Design
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