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開発者インタビュー / InsideVAIO type G 開発者に聞く
04 Solid
原田氏写真   「軽さ」と「堅牢性」の両立のために部品の素材を厳選 徹底したテストで鍛え上げ「強いVAIO」を実現
かつてないほどの落下試験とシミュレーションによる衝撃解析で、落下の衝撃からHDDを保護する仕組みを練り上げました。
ベンチマークで軽量化のための素材を厳選
「軽さ」と同時に「堅牢性」を実現する。VAIO type Gの開発チームの中で、この相反する2つの要素を最も追求した1人が、メカ設計を担当した原田真吾である。例えば、VAIOでお馴染みのカーボン素材。今回は、天面・パームレスト・底面という3つの部位でカーボン素材を使う「マルチカーボン構造」を採用した。この中のパームレストを担当した原田は、軽量化と堅牢性の両立についてこう語る。

原田:今回はtype Gの設計に入る前に、あるひとつの作業をしました。それは「軽量化ベンチマーク」とでも呼べるものです。具体的には、これまで発表されたVAIOを何台も集めて、VAIOを構成する何の素材(たとえば板金とか)が重いのかを徹底的に検証したのです。このベンチマークの結果から、どこを軽くすればよいのかという見通しが立ちました。

次に、ベンチマークの情報を元に、軽量化のための新たな素材選定の作業を行いました。どの素材を使えば薄くできるか? どの素材を使えば軽くできるのか? そういうことを比較検討することで、type Gの各部で採用する素材を決めていったわけです。たとえば、今回は底面にもカーボン素材を採用しました。その理由は、強度はもちろんですが、軽さの面でも大きく寄与してくれるからです。

また、実際の設計に入ったときも、従来なら「ここは1mmで」と黙認していた部分を「あと0.1mm薄くできないの?」と徹底的に検証をし、早い段階で部品メーカーにも協力を仰いで、相談しながら進めていきました。そして、このような素材選定や厚みの検討を入念に行った後に、具体的な設計作業に入りました。その段階でも、つねに軽さと堅牢性のバランスをとりながら、細かい調整を繰り返して煮詰めていくという作業を行いました。

私が担当したパームレストでいうと、カーボンの板の内側には補強のために、小さなリブをたくさん立てています。リブを立てる場所を多くすれば強度は増しますが、やたらと立てると重くなってしまうので軽さを損ねてしまう。そこで、堅牢性の試験を行いながら「ここにリブを立てれば強くなる」「ここは不要だろう」という調整を行いました。これは、天面や底面だけだなくtype G全体にいえることですが、こうした地道な作業の上に「軽さ」と「堅牢性」の両立が達成できたのです。
塗装前のカーボン素材(天面)。液晶パネルのサイズなどを考慮した結果、強度的に最も有利になるよう、カーボンの“目”が縦にとられている。

 
本体の底面部に採用されているカーボン素材。非常に薄く軽量なカーボン素材は、航空機やレーシングカーなどでも採用されており、落下やぶつけた衝撃から本体を保護する。
落下試験を繰り返して実現したHDDの保護
モバイルPCの堅牢性を高める上で避けて通れないもの。それが「液晶」と「HDD」の保護である。落下やぶつけた際の衝撃で、もし仮に本体にヒビが入ったとしても、電源が入ればそのまま使い続けることは可能だが、液晶が割れたりHDDが損傷した場合は、PCが使えなくなることを意味しているからだ。そうなれば仕事が止まってしまう。液晶の保護については、以前のInside VAIO「type T開発者に聞く」で紹介しているので、今回はtype GにおけるHDDの保護について、担当した原田真吾の声を紹介する。

原田:HDDを保護するための仕組みとして、type Gでは2つの技術を搭載しています。1つはtype S(VGN-SZ**)で搭載した「VAIOハードディスクプロテクション」です。これは、縦・横・高さの3方向で落下時の加速度や振動を感知する3軸加速度センサーを採用した、先進的なハードディスク保護機構で、落下や振動を感知するとヘッドを格納し、ヘッドがディスク板の記録面にあたって傷がつくことを防ぎます。そしてもう1つが、今回私が担当したHDD保護の仕組みです。モバイルPCを落としたりぶつけたときに、その衝撃で中身の部品がHDDにあたってしまい、それが原因でHDDが損傷する場合があります。それを防ぐための仕組みです。

まず最初に行ったのは、基板や各種のデバイス類がビッシリと収められているtype Gの限られた空間の中で、「どれだけHDDの周囲に空間をとれるか?」ということでした。周囲に十分な空間があれば、衝撃を受けても他の部品とあたるのを防ぐことができるからです。とはいえ、いくらHDDの保護が大切だからといって、限られた空間を自由に使えるわけではありません。そこで、電気設計を担当した笠井と相談しながら、HDDの周囲の4方向、および天面と底面の2方向に対して、可能な限りに空間をとるようにしてHDDを配置しました。幸いにも、基板の最適なレイアウトを追求したことが、この「HDDの場所問題」にも大いに助けになりました。

次に行ったのが、HDDにゴムの緩衝材をつけるということです。実は、設計当初からこの緩衝材の件があったので、余計に「空間をとりたい」というリクエストを出していたのです。緩衝材については、最終的な形にいきつくまでに、本当にさまざまな落下試験を行いました。いろいろな機種に入っている部品を集めてきて、それを組み込んでバンバン落とし、どれぐらいのG値(衝撃値)がHDDに入っているかをセンサーで調べながら、緩衝材の最適な形状、ゴムの硬さなどを追求したのです。

例えば、最初はゴムを棒状にした緩衝材を使っていました。できるだけゴムが多いほうがクッションになると思ったのですが、実際に落としてテストしたり、シミュレーションを使って衝撃解析を行ってみると、意外なことにそうでもないことが判明した。それで棒の部分を細くしていき、最終的にはHDDの4つの角だけをゴムで保護するという形に落ち着きました。type Gではマシン全体で軽量化を追求しましたが、軽ければその分だけHDDにかかる衝撃値も小さくなって有利です。最終的にゴムの形状だけも5gぐらい軽くなっています。

とにかく、type Gの開発ではかつてないほど落下試験を行いました。特に、どの方向から落ちたときにHDDに一番衝撃が伝わるかを調べた結果、底面から落ちたときが一番キツイことがわかったので、その方向には緩衝材の厚みをもたせて、底面との空間も十分にとっています。この辺は、品質試験を担当した笠井と相談しながらテストを行い、どの方向を補強したらいいかを決めました。その成果が実って、大切なHDDを最高の堅牢性で保護するマシンができたと思います。
周囲に可能な限り空間を確保した上で、HDDをゴムの緩衝材で保護することで、落下などの衝撃からHDDを保護。PC動作時72cmの落下試験によって堅牢性を実現。
05 Cooling,Silent,PowerSave
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