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開発者インタビュー / InsideVAIO type G 開発者に聞く
05 Cooling,Silent,PowerSave
市川真吾/藤田清人写真 あらゆるビジネスシーンで使用する際のストレスを削減 そのために放熱性能と静音性能を徹底的に追求
  静音性の追求ではキーボードの打鍵時に発生する、耳障りな音の解消にもこだわり、会議やプレゼンテーションの席でも気にならない静かさを実現しました。
新素材を採用したファンでさらなる冷却性能と軽量化を実現
VAIO type Gは、光学ドライブなし・バッテリーパック(S) 搭載モデルで約898g、光学ドライブあり・バッテリーパック(L) 搭載モデルで約1116gという、12.1型XGA液晶搭載のモバイルPCでは世界最軽量を実現している。特筆すべきは、ここまでの軽量化を実現しながら、冷却用のファンを搭載し、最高の処理性能を引き出す設計になっている点である。軽量化を実現しつつ、いかに効果的な冷却を実現したのか。放熱設計を担当した市川真吾はこう語る。

市川:type Gの開発では「軽量・スタミナ・堅牢性」が大きな目標でしたが、それ以外にも「使用時のストレスを解消する」ということがコンセプトのひとつとしてありました。ストレスの中には、本体から発せられる熱やノイズなどの問題もあり、モバイルPCにとっては避けて通れない問題のひとつとなっています。その中で、まずは放熱性能ありきとして、type G全体の放熱設計を行いました。最初の段階で「どのくらいシステム全体が熱くなるのか?」の見積もりをしたところ、type T(VGN-TX**)と同等の放熱性能があればよいということがわかったので、それを放熱設計の目標として 同時にどれくらい軽量化ができるかを追求しました。

そんな中で生まれたのが、新しい素材を使った冷却ファンです。ご存知のようにPCの部品で最も熱が出るのが、CPUとグラフィックスとメモリーをコントロールするGMCHというプロセッサーです。従来は、ヒートパイプと呼ばれる部品を使って熱を伝え、その先につながっているファンを回して放熱をしていました。ヒートシンクは銅でできているので、これをなくせばさらに軽量化ができます。もっと軽くてよい素材はないかと探した結果、見つかったのがグラファイトという素材です。軽くて熱の拡散が銅の2倍ある。そこで、0.6mmのアルミ板の上にグラファイトのシートを乗せて熱を伝える仕組みを開発しファンと一体化することで、新しい放熱部品を開発しました。結果的に、type T(VGN-TX**)のファンが18gだったのに対し、type Gでは11.3gになりました。
ヒートパイプに変わる新機構を投入した冷却ファン。銀色のアルミ素材の上に張られている黒い帯状の素材が、胴の2倍の熱拡散性能を誇るグラファイトシート。
冷却ファンからキーボードまで静音性能を徹底的に追求
type Gの開発で放熱性能と並んで追求されたのが静音性だ。静音性というと、一般的には冷却ファンの音を抑えることがあげられるが、今回はキーボードの打鍵時に発生する音についてまでこだわりを持って取り組んだという。放熱設計に加えて静音設計も担当した市川はこう語る。

市川:type Gはビジネスユーザーをターゲットにしたマシンです。そのためには、ビジネスのあらゆるシーンでストレスなく使えることが重要。そこで追求したのが、静かな場所で使う場合の静音性でした。例えば、仕事を持ち帰った夜の自宅、出張したホテルの部屋、オフィスの会議室など、他に雑音がない静かな環境で使ったときに、耳障りな音がしないように心がけて設計をしました。その中で、特に気を使ったのが冷却ファンの音です。静音ファンを採用するだけでなく、風が出る排気口の場所を耳から遠ざけるために本体の奥に配置したり、ファンの上下にある吸気用のスキマを大きくとって耳障りな音を低減したり、ファンの出口から筐体の側面までの距離をとって音を抑えるといった、細かい工夫を随所に盛り込みました。

また、CPUの温度をつねにモニターしながらファンの回転数を制御するという工夫もしています。この場合、CPUが何度になったらどれくらいの回転数でファンを回すという制御を行っているわけですが、AC電源で駆動している場合と、バッテリーで駆動している場合、さらには、デスクワークで、自宅で、会議室で……と、使う場所や条件をいろいろ試しながら、ファンを回転させるポイントを細かく決めました。実際のビジネスシーンにあわせて作りこみをしたので、きっと満足してもらえると思います。

最後に、キーボードの静音化についてお話したいと思います。どうしても軽さを追求するために、キーボードの下にあるベースと呼ばれる部分の板金を薄くします。ところが、板金が薄いとキー入力をしたときに耳障りなシャカシャカ音が発生するのです。板金が0.6mmぐらいだとそういう感じにならないのですが、type Gは0.2mmの板金を採用したのでそのままだとシャカシャカしたままです。そこで、過去に発表された機種を8〜9台集めて、無響箱という周囲の雑音がほとんどない環境でキーボードを打ちながら録音して、シャカシャカ音の原因を追求しました。

その結果、一番下までキーが押されたときに周囲の板が振動する、またその逆にキーが上に戻り終わったときにも板が振動する。それがシャカシャカ音の成分だと判明した。そこで、キーボードメーカーと相談して、キーボードの機構を工夫したのです。具体的には、キーの下にゴムのクッションが入っているのですが、そのゴムの力を調整することでシャカシャカ音を抑えることができました。こうして、プレゼンテーションや会議などの静かな場所で、力強く打っても耳障りな音がしない、静音性に優れたキーボードが生まれたのです。他にも今回のキーボードには特長があります。まず、キートップの印字にはVAIOで初めてレーザー刻印を採用しています。これにより通常のキーボードに比べて印字の耐久性も優れています。また、VAIOオーナーメードモデル及び法人向けカスタマイズモデルでは通常の日本語配列・英字配列キーボードに加え、「日本語配列・かな文字なしキーボード」も選択可能です。英字キーボードなみのスッキリしたデザインと、多くの人が使い慣れた日本語配列の使いやすさを両立しています。
キー入力時に発生する耳障りなノイズの原因を究明し、キー下のゴムのクッションを調整することで、会議などの静かな環境でも安心して使えるキーボードを実現した。
電圧や周波数を下げさらに省電力の液晶ディスプレイを実現
ハードウェア編の最後に、ふたたび液晶ディスプレイに関する話をお届けする。その理由は、省電力設計への取り組みについて少しでも多くお伝えしたいからだ。この後のソフトウェア編でも、ハードとソフトの開発者が密接に連携することが実現した省電力機能の話題が登場する。そこにつなぐ意味も込めて、液晶ディスプレイの設計を担当した藤田にもう一度語ってもらった。

藤田:type Gに搭載した液晶ディスプレイは、軽さだけでなく実は消費電力的にも優れています。というのも、一般的に液晶パネルは汎用性を持たせるために、駆動電圧が決まっているのですが、今回はtype G専用の低電圧駆動回路を開発し、その分だけ省電力性能に貢献するという設計をしたのです。そのため、PC側のメインボードでは液晶専用の電源回路をわざわざ設計しているほどです。また、液晶ディスプレイの動作周波数を下げれば消費電力も抑えられるので、「この液晶パネルをつけるためには、理論的にどこまで周波数を下がられるか?」を検証して、通常よりも2割ほど低い周波数を設定し、それをソフトの開発者やビデオ担当の開発者に対応してもらいました。これによって、ディスプレイ性能は維持したまま、消費電力がより少ないtype G専用の液晶ディスプレイができあがったのです。

また、type GはバックライトにLEDを採用しているのですが、このLEDの制御でも省電力に関係する工夫を盛り込んでいます。ご存知のように、LEDは半導体なのでバラつきが多いのですが、これを全部同じ明るさで光らせないと画面がムラになってしまいます。type T(VGN-TX**)のときは、ばらつきの最大公差を考えてマージンを持った電圧をかけていたのですが、今回のtype Gでは新しくICを開発しました。 これは、個々のLEDのバラつきを検出することで、接続されたバックライトのLEDに必要最低限な電圧のみをかけるという制御をしています。これによって、バックライト品位を維持しつつ、最小限の電圧しかかけないため、省電力にも寄与しているのです。
低電圧駆動回路を専用に開発したり、液晶ディスプレイの動作周波数を下げるなど、徹底した省電力設計を行なったtype Gの液晶パネル。
06 Software/Utility,PowerSave
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