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type R 開発者に聞く

05 Sound
湯川 修平機構設計
松本 賢一オーディオ・電気設計

高音質デバイスの採用と徹底した音質チューニングから、最高のサウンド再生環境が生まれた。

type Rを実際に触ってみて最初に驚くのは、CDなどの音楽を再生したときだろう。一体型とは思えない繊細かつ重厚なサウンドが堪能できる。その秘密は、新開発のユニークなスピーカーに始まり、アンプやDSPなどのオーディオデバイスの吟味、そして一体型だからこそできた徹底した音質チューニングにあった。スピーカーの配置、筺体の影響までを考慮したことにより、高級なスピーカーに劣らないすばらしいサウンドが楽しめる。


新開発のスピーカーユニット

type Rから流れるサウンドは重厚で繊細だ。しかし、type Rのスピーカーはディスプレイの周辺の狭い額縁部分に詰め込まれている小さなものだ。この小さなスピーカーからなぜ豊かなサウンドが飛び出すのか。そのスピーカーを担当したのは、オーディオ部門出身で、今回からVAIOのPCチームに参加したオーディオ・電気設計担当の松本賢一だった。

松本: ノイズレスというデザインコンセプトなので、前面に搭載するスピーカーのサイズはかなり限られます。しかし音質を犠牲にはできません。「狭額縁の一体型PCでもいい音を出せ」というのがオーディオ畑出身の私への指令だと理解しました。 いろいろ模索している中、オーディオ・ビデオ事業本部が開発中の細型スピーカーの話が入ってきました。通常の細型スピーカーよりも細く、しかし音質はこれまでのものにない解像感を実現していて、私が今回のtype Rで実現したい音の方向性にも合っていました。 それを駆動するS-Masterデジタルアンプの高い解像感やスピード感との相乗効果にも非常に期待が持てました。一方で、ユニークな形状と構造ゆえ、使いこなしが難しいとのことでしたが、挑戦する価値のあるスピーカーだと判断しました。

通常のスピーカーは円形をしているが、type Rのスピーカーは縦長だ。しかし単純に幅を狭めると振動板やコイル、磁気回路も小さくなり、音量や低音感が減少するなどの弊害が出る。そこで構造を一から見直したユニークな細型スピーカーを開発した。その結果、丸形にはないメリットも生まれたのである。

松本: 細型スピーカーは一般的に音圧や低音の減少だけでなく、その形状の影響でやや雑な音になりがちです。しかしこのスピーカーは細型に適した新しい駆動構造や、ソニーオリジナルである発泡マイカの振動板などにより、これらを克服しています。 一方でこの形状ならではの大きなメリットもあります。一般的に音源は点音源が望ましいとされていますが、これはスピーカーが大きくなると、振動板の各部と耳との距離が一様ではなくなり、音波の到達時間の差が大きくなり、音の定位感や臨場感が損なわれるからです。 リスニングポジションが近いPCのスピーカーではこれは特に顕著です。type Rの細型スピーカーは横方向は理想的な点音源に近いので、クリアな立体感の溢れる音質が生まれました。

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新開発の縦長5.5W+5.5Wスピーカー。振動板はソニーオリジナルの発泡マイカで作られている。

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11Wのウーファー 。これらの高出力のスピーカーを内蔵するためにこれまでにないレベルの振動対策も施す必要があった。


徹底したチューニングにより、最高のサウンド再生環境が生まれた

音質の良さの要因はスピーカーだけではない。一体型では考えられない11Wのサブウーファー 、5.5WのスピーカーやSound Realty(コーデックチップ)、S-Masterデジタルアンプ、高精度DSPなど、数多くのところで工夫が凝らされている。一般のセパレート型のPCであれば、ディスプレイを机の上に置き、スピーカーやウーファー はその脇、あるいは棚といった好きなところに置く。ところが、人によって使用するスピーカーや設置位置が変わる環境では意図した音質は届けにくい。しかし一体型のtype Rではスピーカーやウーファー 、ディスプレイの位置が最初から決まっている。だからこそ徹底的なチューニングが可能だったのだ。

松本: 音源の持つ音の良さをそのまま出したい。その為に一体型だからこそできたことが多くあります。例えば、いくら高音質なスピーカーであっても、ディスプレイや筐体の影響で音質は悪化します。 一例としてバッフル効果というものがあり、スピーカーから出た音がディスプレイで反射されて、スピーカーからの直接音と干渉して、音像感や解像感を損ねます。これは通常では防ぎようがありません。しかし、一体型のtype Rだからこそ、その効果を前提にチューニングすることができ、その結果、音質への悪影響を抑えたリアルな音像感を実現できたと思います。 また、ウーファーに関しては低音の量感だけでなく質感、解像感も重視しました。ステレオ信号を2.1chに振り分ける為のチャンネルデバイダー処理について、今回、VAIOで初めてDSPを用いたデジタル信号処理方式を採用しました。従来のアナログ処理方式に対して、デジタルならではの理想的でかつ安定した特性、性能が実現できました。 このようなチューニングの結果、中高域だけでなく、低音域まで十分な解像度とスムーズさが得られるようになり、このサイズでは両立の難しい、迫力と繊細さを共に実現できたと思います。一体で完成されているデザインだからこそ、その両脇に別に購入したスピーカーを置かなくて済むような音にしたかったですし、実際、そうするよりもずっといい音がtype Rから聞こえると思います。

type Rに搭載された11WというウーファーはVAIOの歴史のなかでも最大の出力になる。しかしPC内部から発生する大きな振動は、他のデバイスに影響を及ぼしかねない。特にデータを収納するHDDは振動から守りたいデバイスだ。そこでこれまでの一体型のVAIOでは、固定されていて揺れにくいスタンド部分にHDDを収めていたのだ。ところが11Wともなると、設計側からは「とんでもない。それほどの振動が発生したら、どこに設置してもHDDに悪い影響が出るかもしれない」との声も上がったほどである。

湯川: type Rでは、振動からの影響を抑えるために、徹底的なシミュレーションを行い検証しました。2基のHDDも離れた位置に取り付け、それぞれゴムで浮かせるフローティング処理を施したうえにブラケットで固定しています。ウーファーは、ディスクデバイス取り付け部とは別のシャーシ、しかもセットの重心位置に配置しました。もちろんシャーシは新設計です。こうした技術を組み合わせることで、これだけの大音量を出しながらも、従来機種よりも低い振動加速度を実現し、HDDに対する影響を最小限に抑えることができたのです。

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スピーカーは横側に設置されているが、よく見ないとわからないほどだ。


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